やぎさんのオリジナル泳法のすすめ

楽に、静かに、できれば速く、還暦すぎてのラクラク健康スイミング (円月泳法、鉤腕泳法、八の字泳法、招き猫泳法、らくらく2ビート背泳、やぎロール、イルカ泳ぎ等)

23. 閑話休題 オリジナル・メドレー

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まあ、次々と、色んなろくでもない泳ぎ方を紹介するもんだとあきれておられる方もおられるかもしれない。

私自身も、よくもまあ、と思わないでもない。

しかし、それぞれの泳法には、それぞれの特徴があって、どれも捨てがたく、さりとて、どれが、一番良いか決めればよいといった問題でもない。

だが、特にお勧めしたい泳法を強いてあげるならば、らくらくクロールでは、円月泳法、鉤腕泳法、招き猫泳法、八の字泳法だ。そして、らくらくクロール全てに適用できるやぎロールだ。

そのほかの泳法では、らくらく2ビート背泳ぎ、それから、全く異種なものとして、煽りイルカ泳ぎについても、是非、試してみられたらどうだろうか。

私は、健康のための運動として水泳を、ほぼ毎日1時間ほど、行っている。

こ れまで紹介したらくらくクロール泳法とそのやぎロール版、キックなし版、その他、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライ、古式泳法などを含めて、数十種類の泳法を泳ぎ分けてい る。それゆえ、各泳法50mとしても、これら泳法をメドレーで泳ぐと、すぐ1kmを超えてしまう。

また、いろいろ、考えながら泳いでいると、すぐ新しい泳ぎ方のパターンが頭に浮かんでくる。これが、泳ぎを毎日継続できる動機付けにもなっているのである。

競技にでる訳ではない。他人に迷惑をかけない限り、何の制約もない。

毎日、適度の運動ができて、楽しく健康を維持できれば、これに越したことはない。

 

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22. らくらくクロール その8 八の字泳法

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単純で、ラクな泳ぎを紹介する。

八の字泳法

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と勝手に呼ぶことにするが、このような泳法は、これまでにあっただろうとは思うのだが、調べるつもりがないので、勝手に紹介させていただく。

これは、ゆっくり歩くようなリズムで、水中散歩をしている感覚がある。

とても簡単だ。

とても単純だ。また、肩が余り上まで上がらない方でも、充分できる。手が額くらいまで上がればできるのだから。

プルの腕の練習

プルの範囲

泳ぐ前に、プルの腕の動きを練習しよう。まず、陸上でもプールの中でも、壁に背を向けて、尻を壁にぴたりとつけていただきたい。

上体を前傾させ、前腕を額の少し斜め前方下に水平に「ハの字」の形に置く。これが基本姿勢だ。(図上)

まず、左腕から、ハの字の払いを延長する方向に、左斜め後方に、肘を伸ばさずに払う。手や肘が壁にぶつからないように、横に払い、肘の角度を常に直角近くに保ったまま、もとのハの字の位置に、静かに下ろす。(図下)

ハの字が揃ったら、今度は、右腕で逆方向に同じことを行う。前に置いた腕は肩とくっついて、上体のローリングと連動して動くが、その腕の形状は保つようにすること。

これを、慣れるまで、何回も繰り返し練習する。

壁を背にして練習する理由は、2つある。

 

ひとつは、肘を伸ばさない訓練をするためである。肘を伸ばすと上腕三頭筋疲労するだけでなく、後ろに回す時間が無駄になってしまうからである。泳 速を上げるにつれて、前腕が流れて肘が伸びてしまうことはありうるが、あくまで、力を込めるのは臍付近までで終わりにし、肘は伸ばさない。

ふたつめの理由は、身体の面より、腕が背中側に回らないようにするためである。腕を背中側に回すと、肩の筋肉や関節を傷めるおそれがある。それゆ え、腕を横に払う過程では軽く肩を後ろに引いてローリングを行う。そのとき、前に残したハの字の片割れの前腕の形状は変えないこと。ただし、上体の大きな 揺れに従って深く水底に向かって押しこむ動きは自然である。

さて、充分に感覚をつかんだら、実際に泳いでみよう。

まず、壁を蹴って、蹴伸びしてから、腕をハの字にする姿勢を取ってほしい。そして、以下の1、2で説明する腕のプルと足のキックを同時に左右交互に行う。下肢はピンとは伸ばさない。弛緩している方が良い。

腕の動き

壁際で練習したとおり、まず、右の腕で、ハの字の払いを延長する方向にプルを開始し、壁があるつもりで、右斜め後方に、肘を伸ばさずに払う。

腋を開けて、手先はだらんと垂らし、指先が水面を這うようにリカバリーし、元のハの字になるよう、水面と平行に静かに腕を下ろす。ハの字に揃った ら、今度は、左手で同じように、ハの字のはらいを延長するように、斜め後方に、肘を伸ばすことなく払う。こうして、左右交互に、ハの字に静かに置いては払 う。

ただ、このプルだけでは、最初はあまり進まないかもしれない。25m泳ぐのに、30回くらいストロークを要するかもしれない。この泳ぎは、次に紹介 するキックと非常に相性がよいのだ。このキックと合わせて、ゆっくり泳げば、半分くらいのストローク数で、楽に到達するだろう。さらに、後に詳述するが、 肋骨を引き上げて、重心を前に移動すれば、さらに楽に進む。慣れてくれば、キックなしでも充分に進むようになる。

キック

足は片足ずつ、腕のプルに合わせて、腕のストロークと同じ側の足を、腕を緩めた時に大きく膝を曲げて、腕が腹にかかる時にゆっくり蹴る。蹴るとは書 いたが、むしろ、押す、あるいは、伸ばして足先を揃えると考えたほうが良い。足によるプッシュなのだ。腕では、プルだけを行い、足では、プッシュを行うの だ。

この「キック」は、プルの腕と同じ側の足で同時に行う。一応、2ビートだ。

このプッシュの効果を知るために、とにかく、こんなに膝を曲げていいのと思うくらい、最初は特に深く蹴る。浅くすることは、いつでもできる。膝を曲 げきった時には、水流の抵抗を感じるだろう。この時に滞留する水がキャッチされ、足でのプッシュの威力も増すのだ。これが、通常のキックと大きく異なる。

図のように、蹴る足のくるぶしを、もう一方の足に沿って、その足膝の横にくるぶしが当たるくらいまで引きつけて、後ろにゆっくりズズドーンと押す(踵を もう一方の足より後ろに持って行ってはならない)。腹筋に力を入れて、身体を伸ばし、足先を揃えるという意識がよい。膝を曲げるときも、膝を腹に引きつけ るくらいの気持ちで行う。これにより、腰が浮き、上体が前に押し出される。また、ローリングも加速される。

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足首から下は、いつも脱力していること。また、蹴らない足も脱力しているが、蹴る足と一緒に動いても構わないし、そのほうが、推進力も増す。むし ろ、両足が仲良くしている方が、楽しく、気持ちが良いかもしれない。その場合は、傍目には、ドルフィンキックのように見えるだろうが、意識的に力が入るの は片側だけである。なお、蹴る足も膝が伸びきる前に脱力すること。

これだけ深く膝を曲げるためには、曲げる準備の時間も必要だ。それゆえ、蹴るとき以外は、足の緊張を常に解いておくほうがやりやすいし、疲労も少ない。

この「キック」を、今後の説明のために「散歩キック」と名づけておこう。

散歩キックとハの字プルを、水の抵抗を確かめるように、ゆっくりと、同時に行うと、前のめりというか、前方に回転するような感じを受けるはずだ。そして、これが気持ちの良い推進力になっていくことが体感できると思う。

散歩キックを初めて見る人は、こんなに膝を曲げるなんて見たこともないと、いかがわしく思うかもしれない。しかし、何よりも、散歩キックは、手足の動きが一致して自然であり、腰が浮き、推進力とローリングが加速されるすぐれものだ。

もちろん、高速泳法には向かない。そもそも、2ビートは楽に泳ぐためのものだ。大きく曲げる膝は、水の抵抗にはなるが、下肢を浮かす効果を持っている。

これは、体重を前へと移動することになり、抵抗により揚力をも生じさせるからだ。腰を浮かせて身体を水平にすることは、非常に大事なことだ。大きな 面積の胴体を斜めにするより、太ももを斜めにするほうが、余程ましだ。膝を大きく曲げても、その欠点を補完する効果もあるのだ。このことは、蹴伸びして片 方の膝を大きく曲げてみれば、その抵抗が然程でないことがわかると思う。

息継ぎ

同時に行うストロークとキックは、身体をゆっくり持ち上げる効果があるので、この時、そちら側に少し顔を回せば、楽に息ができるはずだ。 ただ、次の段階のことを考慮して、上体の浮き沈みも利用してみよう。同時に行うストロークとキックのバランスを調整することにより、上体をゆっくり持ち上げたり、上体を沈み込ませたりするのである。

右腕の前腕を前方に置く際、左足のキックを若干大きくして、置いた右腕に頭の重さを加えて体重をかけて前方に飛び込むようにしてみよう。そうする と、前方の斜め下方に上体が沈み込みつつ、反対に下肢が浮き上がる。あたかも、右受け身に飛び込んでいく感じで、ローリングしながら時計回りにねじ込み、 滑っていく感じがある。

左腕は、ローリングに引っ張られて、すばやくプルが行われ、腋を大きく開けて水上に抜き去られてリカバリーされる。そして、前のめりに加速感をもっ て滑っていく間に上体が沈んでいく。次に、その左腕をハの字に押しこんでいくが、今度は、右腕でプルし、右足でキックする番である。この動作を、前方斜め 上めがけて浮上する心持ちで行うと、スーッと上体が浮かんでくるので、右側に少し顔を回すだけで楽に息継ぎができるはずだ。

八の字泳法の評価と注意点

八の字泳法は、動きが単純で、ラクであるにもかかわらず、その速度は、速くはないが、遅いものでもない。壁を蹴らないで、25mを16ストローク、35秒前後くらいのペースであろう。小一時間で2kmは泳げる。力を入れて泳げば、25mを14ストローク、25秒前後だ。

散歩のストロークは、ハの字に斜めに払う。また、散歩では、意識的な大きなロールはしないが、腕のリカバリーは胸の平面を越えて後ろに回すと肩を痛 める虞があるので、壁を背にした練習での腕の動きでリカバリーができるぐらいの上体のローリングは必要だ。また、浮き沈みを効果的に使う場合には、積極的 にローリングしたほうが上手に沈みこめるだろう。

それに、もうひとつ、ローリングの重要な効用がある。それは、キャッチだ。ハの字に置いて、残した腕の前腕は、もう一方の腕がリカバーしてくるとき に、自然とローリングに引きずられて水流を斜めに遮る形になり、これが、水をつかむキャッチとなっているのである。したがって、これに続くプルが効果的に 水を引っ張れる結果となっている。

プルとキックの効果

散歩でのキックの方法は、すでに説明したとおりであるが、このキックは、腰や下肢を浮かす効果と、前進力を生む効果がある。

小さく蹴れば、水流に対して、膝を緩めた時の抵抗が小さくて済むが、上記効果も小さくなる。大きく蹴れば、その逆である。

その効果の違いを、コースの行き帰りで、実際に、大きく蹴ったり、小さく蹴ってみて確かめよう。当然であるが、そのときのプルは、キックのスピードや強さと同期させて行おう。

また、ゆっくりと弱く蹴ったり、強く蹴ったりして、その効果の違いも確かめよう。

大きく蹴ったり、強く蹴れば、下肢の浮きが良くなり、身体が水平に近くなり、推進力も高まる。

小さく蹴ったり、弱くゆっくり蹴れば、下半身が沈みがちで、推進力も弱まるはずである。

ピッチも、意識的に、速くしたり、ゆっくりしたりすることによって、その効果や、疲労の程度も確認しておこう。

どのようなキックが、自分にとって、らくな範囲で泳げるか、その時のキックの大きさやスピード、強さを確認しておこう。人にもよるが、おそらく、最も楽で、そこそこの効果があるのは、大きく、ゆっくり蹴った場合であろう。

重心移動、浮沈の効果とらくな息継ぎ

重心を前に移動する練習

基本原則で述べたが、バタ足をしなければ、通常、足が沈んでいくものだ。普通、自然に浮かんだら、前に手を出していても足は沈んでいく。

キックを弱くすれば、やはり、下肢が沈みがちになる。

 

前進するための抵抗を少なくするためには、より水平に身体を保つ必要がある。当然、より速く泳ぎたいときも同じだ。

沈みがちな下肢を浮かすためには、なるべく身体の重心を頭の方に引き上げるようにすればよい。身体の浮力の中心より重心が前に来れば、シーソーのよ うに頭が沈んで足が浮くというわけである。そのように努力すれば、足が浮くようになり、キックなどしなくてもクロールや背泳が楽にできるようになる。

その方法として、一番効果的なものが2つあることを、既に、基本原則2で述べた。

(1) なるべく、前方に腕を残す時間を多くとる。

(2) 肋骨を上に引き上げ、胃を肋骨の中にしまい、お腹を細くする。

散歩では、このうち、(1)については、両前腕をハの字に置くことによって、腕を前方に残す時間を多くしている。その効果を確認するために、試し に、リカバリーした腕を前方にハの字に置く前に、もう一方の腕のストロークを始めてみると良い。前方に重心を置く効果が薄れ、下肢が下がり気味になること が確認できるであろう。

次に、(2)について、練習してみよう。これは、少し修練が必要であるが、非常に有用な技術だ。何より、腹が締まって、スタイルが良くなる。がんばってみよう。

まずは、陸上での練習として、空気を肺一杯吸って、その肋骨の形を維持して、空気を思い切り吐く。腹だけがしぼむはずだ。

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できるだけ、胃を肋骨の中にしまうように腹筋を使う。これは、腹筋運動で使う腹直筋ではなく、腹の横の筋肉(腹斜筋)を若干緊張させる。

これができるようになると、実際に、この姿勢で、散歩を泳いでみて欲しい。そして、そうしないときと、そのようにするときの違いを確かめて欲しい。

肋骨を上げる(胸郭を広げる)ことができるようになると、体全体が浮きやすくなると同時に、極めて容易に下肢が浮くようになり、浮くためのキックは 不要なほどになる。こうなると、動作の緩急のピッチはどのようにでもなり、ゆっくりした動作で、そこそこ速く泳ぐことができるようになる。

息継ぎは、肋骨を上げたまま、腹を膨らませて、空気を吸う。

すなわち、いつも胸郭が広がっているので、息継ぎをする時は腹式呼吸で行うのだ。水の中で胸を膨らませるよりは楽なはずである。とはいえ、胸郭が広がって いるので交換できる空気の量は、肺の半分ほどになるが、これには、すぐに慣れる。また、普通、息継ぎの直前に息を吐くほうが、浮力を十分に活用できて良い のであるが、苦しければ、息継ぎしない側でのプルのときに少し吐いても構わない。ここで、重要なことは、そうした動作の有無による結果の違いを認識し、適 宜に動作を選択し、コントロールできるようにすることだ。

浮沈の効果とらくな息継ぎ

次に、上体の浮き沈みを利用する練習をしてみよう。同時に行うストロークとキックの強さのバランスを調整することにより、上体をゆっくり持ち上げたり、上 体を沈み込ませたりする練習である。これは、これは、すべての泳法に共通で、非常に重要な動きなので、習得できるまで、しっかり練習しよう。

ここでは、右側で息継ぎをする場合を想定して説明する。

右腕の前腕を額の前方水面にハの字に置く際、左腕のプルを行いつつ、同時に行う左足のキックを若干大きくして、水面に置いた右前腕に上体の体重をか けて、頭を下げて押し込んでみよう。そうすると、下肢が浮き、上体が前方斜め下方に沈み込みつつ加速が得られるようになる。次に、既にリカバリーを終えて 一緒に水没してきている左腕をハの字に戻すが、右腕のプルと右足のキックを、頭を上げ気味に前方斜め上めがけて浮上する心持ちで行うと、スーッと上体が浮 かんでくるので、右側に少し顔を回せば楽に息継ぎができるはずだ。

この浮き沈みを、最初は大きく行い、深さの感覚を確認してみよう。

この浮き沈みの運動は、息継ぎが楽になるだけでなく、推進力を増加させる働きもあることを確認しよう。

前進しながら、上体を沈ませたり、浮かせる場合は、ことさら肋骨を引き上げなくても、結構、楽に姿勢を制御できるようになるが、肋骨を引き上げると、浮力がまして、より確実に制御しやすくなる。

下肢は、両足とも、なるべく脱力して、蹴る足だけに必要な時間、必要な力を加えよう。

  

 

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20. 古式泳法とのコラボ泳法  煽りイルカ泳ぎ

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今回は、趣向を変えて、古式泳法をとりいれてみた。

古式泳法には、多く「煽り足」が使われている。

抜き手には、いろんな流派もあるようだが、基本は、煽り足と腕の抜き手を連携させた泳法である。

今回、開発した泳法は、煽り足とドルフィンキックを交互に入れて、その度に、抜き手を入れた。これも「らくらく泳法」である。

泳速も25mを30秒程度と、そこそこである。腕のストローク数は、16ストロークほどか。

また、クロールの単調さに比べて、楽しいし、気持ちも良い。是非、試してみられることを奨める?

「煽りイルカ泳ぎ」と呼んでいる。

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1. 一連の動作の概要

壁を一蹴り、まずは、蹴伸びの姿勢をとろう。

やおら、上体を右にロールさせ、

(1) 右足を上にした煽り足を行いつつ、右手で円月泳法のプルを行う。

(2) 動作が完了したら、両手を前方に揃え(軽く菱形状で良い)、今度は左手で円月泳法のプルをしつつ、ドルフィンキックをひとつ入れる。

(3) 体勢を左に向け、今度は、左足を上にした煽り足を行いつつ、もうひとつ左の円月泳法のプルを行う。

(4) 動作が完了したら、両手を前方に揃え(軽く菱形状で良い)、今度は右手で円月泳法のプルをしつつ、ドルフィンキックをひとつ入れる。

このように、左右の円月泳法のプルを2回ずつ、その度に、ドルフィンキックと煽り足を1回ずつ行う。

左右2回ずつのストロークを行うのは、「ヤギロール」08. 究極の、らくらくやぎさんオリジナル泳法 やぎロール - やぎさんのオリジナル泳法のすすめのプルの特徴である。

これまでの、やぎロールは、キックに煽り足を入れたことがなかったが、今回初めて入れた。結構、相性が良い。

なお、円月泳法のプルについては、過去記事を参照されたい。

2.具体的な動作のポイント解説

(1)煽り足

「煽り足」は横泳ぎでおなじみとは思うが、古式泳法の「伸し(ノシと読む)」や「抜き手」などで多用されている。ご存じない方に、一応説明を加えておこう。

煽り足は、次に3拍子で行う。

(イ)両足の膝を曲げて、尻に引きつけ、

(ロ)前後(上の足が前)に大きく開脚して、

(ハ)伸ばしながら、閉じる。

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脚が、平泳ぎのように横に開かないように注意すること。

(イ)(ロ)では、水流の抵抗を受けるが、(ハ)では、大きく進む。

この煽り足は、縦(水面に垂直方向)でも使えるが、後ろ足が水面に出てしまうので、体を斜めに立てて足を深く沈めなければならなくなる。したがって、伸しや横泳ぎのように、横にしたほうが、抵抗を少なくすることができる。この煽りイルカ泳ぎでは、完全に横にした。

(2) 抜き手

「抜き手」という言葉自体は、足の動きも含めた古式泳法における一般的な名称だと思うが、泳ぎ方の種類は、大抜き手や早抜き手など色々ある。

ここで、なぜ、抜き手という言葉を出すかというと、古式泳法のこの腕の動きが、円月泳法のプルに似ているからだ。

抜き手は、煽り足と円月泳法のプルの組み合わせを一方あるいは、両方で繰り返す。そのテンポや、体勢の角度などは様々であるが、このプルの組み合わせは、ともあれ、典型的な抜き手の形といって間違いはないであろう。

抜き手の腕の動きは、前方に伸ばした手を、一旦、目の前に腕を鉤型にして水平近くに保ち、それから、やおら、腕を引いて腹から横に抜く。円月泳法では、手を前方にいっぱい伸ばすかどうかはどちらでもよく、また、ことさらに、もっと円く振りぬくこととしているが、抜き手の動きとかなり似ている。

3. ドルフィンキックを入れる理由

古式泳法の大抜き手では、上記の抜き手の煽り足とプルの組み合わせを、左右交互に行う。

ところが、左右に調子よく交互に行うということは、結構難しい。煽り足を180度完全に反転させて行うというのが、少なくとも私にとっては、難しいのだ。

そこで、一旦、ドルフィンを真ん中に入れて、体勢を万全にして反転することにしたのである。これは、実に相性が良かったと思っている。これにより、忙しかった動きが、きわめてゆったりとできることになり、動きにも変化が出てくるので、泳ぎもラクに、楽しいものとなった。

対抗泳者や隣のコースに気を配って泳いでいただけたら幸いである。

 

 

【やぎロール】

【その他の泳法】

 

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19. らくらくクロール その6 招き猫泳法

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久しぶりだが、らくらくクロールの新しい泳法を紹介しよう。

この泳法でも、抵抗をなくすために身体を真っ直ぐに保つということが基本であるが、それは、上体の姿勢にとどめ、手足の形態は、通常のクロールとは大きく変えた。

通常のクロールでは、腕や身体を前後に長く伸ばすのが通例であるが、この泳法では、腕も真っ直ぐ伸ばさず、下肢も、若干緩んだ感じが基本である。

泳ぎの動作は、四足でゆったり歩く感じ。だんだん速くしていくと、ねこが獲物を狙って次々に跳躍していくような感じになる。もっとも、傍から見れば、大きな犬かきといった風情かもしれない。

しかし、そんな格好でも、他のらくらくクロールに比べて、泳速に遜色はない。むしろ、もっと速くなる可能性を秘めているかもしれないと、私は考えている。

名前は確定していないのだが、

招き猫泳法

と呼ぶことにした。手の形がそっくりだからである。

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それでは具体的に説明しよう。

1. 基本的姿勢

(1)頭から腰までの上体を、真っ直ぐ水面に浮かす。

(2)腕は、スフィンクスのように、肩間接と肘を直角にして、手のひらは水底に向ける。(ただし、実際に泳ぐときに、両腕を同時に平行に揃える瞬間はない。)

(3)足はリラックスさせて伸ばす。

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重要なことは、上体の位置である。決して反らせてはならない。むしろ、丸めるような意識で良い。

2. 腕の動き

通常のクロールは、手の先を可能な限り前に出すことを求めている。身体も、前後に長く長く伸ばせと。

確かに、形状抵抗を小さくするために、それができればよいが、私のように、肩関節の可動範囲が狭く、腕を前方水平に伸ばせない者にとっては疲れるし、つい胸を張って抵抗を増やしてしまう。

そこで、この泳法では、リカバーした前腕を、水面に鉤型に平行にして着水させ、そのまま水底の中央線めがけて手の平を下に向け前腕全体を水平に保って、体重をかけてこれを押し込むのだ。一連の動きは、アニメ動画で確認していただきたい。

(1) リカバーしてきた左腕を、写真5までで体重をかけて押し込む

前腕を「水平に押し込む」と書いたが、本当は、すこし前のめりに押し込んだほうが良い。前進するための揚力が得られるからだ。ただし、押し込み終わったら、手の力を抜いて水平に戻す。鉤腕泳法と同じように水流に対する抵抗を上腕だけに受けるためだ。しかし、そうすると、手のひらだけは倒れて、招き猫のような手の形になる。前腕を水平にするために手首があがり手のひらだけ倒されるからだ。これが、キャッチとなる。このときには、もう一方の腕(右腕)が、リカバリーを終わって水面に鉤型を保って着水される。

(2) リカバリーして着水した右腕は、上記の動作で押し込まれるが、その間、キャッチに入った左腕は、プルを行う。これは、体重を乗せて押し込んだ右腕との相互作用として、実際には余り考えることなく、上体のローリングに伴って自然にプルされるのであるが、その形状と軌跡には選択の余地がある。

ここでは、招き猫の手の形そのままに、肘を伸ばすことなく、真っ直ぐにプルする。プルするといっても、肘を伸ばさないので三頭筋は使わない。腹筋と広背筋を使って肩甲骨を押し下げる動きで、肘を横腹まで引きつけ腋を広げてそのまま抜く。

(3) 抜いた手は、だらりと下げて、水面をなぞりながら、肘が肩の線まできたら着水し、前方下方にねこが獲物を押さえ込むような感じで水中に押し込みながら身体は前に跳び込んでいく。前のめりだ。

このプルは、上下方向には少し弧描くが、基本的には前後の直線プルである。これは、直進性を保ち、前進と胴体を押し上げることに力を発揮している。

身体の直進性のバランスを保つためには、前方に伸ばす腕は、肩幅か、それ以上開いた位置に着水するのが良いだろう。

この時の格好であるが、次第にリズムを上げていくと、さながら、自分が豹になって、獲物に向かって匍匐し、ダッと跳びだすかのような気にさえなる。それゆえ、手指の形が、ついつい鈎爪になっているから笑ってしまう。

このプルは、前腕が水流に対して直角にならない。したがって、直接的な推力に寄与しないようであるが、水流を招き猫の手の平に集める結果となり、抗力を増していると考えられる。

3. 下肢の動き:キック

下肢は、上体の丸太のような真っ直ぐな形を邪魔してはならない。

そこで、ピンと伸ばすのではなく、力を緩めて、膝が曲がるくらいで良い(基本姿勢)。

蹴り方は、前記事「18. 2ビートキックの効用」で紹介した「散歩キック」で、膝を大きめに緩めて、後方に向けて蹴る方法が良い。

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ゆったりと泳ぐ場合は、さらに、ゆっくり、大きめに蹴る。

ズズドーンと蹴るのだ。そうすると、ドーンと身体も前に押し出され、腰も浮く。

大きく蹴るためには、足をピンと伸ばさず、膝を緩めておかなければ間に合わない。また、両方の膝が曲がっていると、両足で蹴ることもでき(ドルフィン)るが、比重は片足にかけるほうがいいだろう。両足を使うと、体全体が、バネのように伸び縮みする感覚があり、リズムも良い。

蹴る足は、一応、プル側の足を想定している。腰は大きなローリングはしないので、反対側でもよいのだが、それは、好みの問題だろう。

4. 効果の評価

冒頭で述べたように、この招き猫泳法は、これまでのクロールを美しいと思う人には、格好が悪いと感じるかもしれない。大きな犬掻きといった格好だからだ。

しかし、格好に似合わず?結構、速い。

私は、25~30秒で25mを14ストロークほどで泳ぐ。私のクロールとそう大差はないのだ。もっとも、クロールでの最速は20秒ちょっとなので、クロールが遅いといわれたらそれまでのことだ。しかし、クロールの速い人でも、この泳法で泳ぐと、同等か、もっと速く泳げる可能性があるのではないかと思う。

その理由であるが、この泳法では、前下方に押さえる前腕、抗力効果のおおきい直線プル、斜め下方へのキックに身体を水面に押し上げる効果があるのが特徴であり、速く泳ぐほど身体を水面から上に押し出して、形状抵抗や摩擦抵抗を少なくすることが期待できるからである

ただし、速く泳ぐにしたがって、前方に押さえ込む前腕は、だんだん前に出していくことになるだろう。どんな、泳法でも、泳ぐ形は泳ぐ速度によって少しずつ変える必要があるからだ。招き猫泳法が散歩歩きから、跳躍泳法への変身だ。

 とにかく、これまでの、伸びて伸びてといった泳ぎとは、全く感覚が異なり、バネが伸びたり縮んだりするような弾力性のある動きなので、やみつきになる。ぜひお試しあれ。

 

【クロール】

 

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18. 2ビートキックの効用

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このブログで紹介している「らくらく泳法」では、キックによる推進力については、あまり重視していない。最初から基本原則で述べているように、「キックで疲れるようなことはよそう、」と述べてきた。足には筋肉がたくさんついていて、これを動かすとエネルギーをそれだけ多く消費する。それに、腕に比べて、だいぶ推進力は落ちる。短距離をより速く泳ぐ人は、何でも総動員して目一杯使う必要があるが、有酸素運動でゆっくり長く泳ぎたいという人には、とても薦めたくないものだからである。

それゆえ、これまで紹介してきたオリジナル泳法は、すべてキックなしでも泳げるものだ。しかし、キックは役に立たないわけではない。それどころか、大いに役に立つ。バランスをとるため、下肢を浮かすため、ローリングするため、そして加速するためだ。

疲れるようなキックはしたくないという趣旨から、このブログでは、基本的に2ビートを推奨してきた。

それゆえ、今回の記事は、その2ビートにおける蹴り方について書いてみたい。

これまで、私なりに、クロールと背泳について、いろいろキックの方向を試してきて、その結果、蹴り方については、内股で蹴ることをこのブログの記事において、奨励してきた。

今でも、やはり、内股キックがいいと思うのであるが、この記事では、もう少し広く、分析してみたい。

1. 2ビートキックの効果

2ビートにしたときの効用は次の3つがあげられよう。

・疲れない

・プルとの動作のタイミングが一致するので意識が集中する

・蹴っていない時の水流抵抗が少ない

バタ足は、足がバラけるような蹴りかたはしないほうがよい。水の抵抗を大きくしないためであるが、とりわけ2ビートでは、気をつけたほうが良い。原則として、蹴ったあとは意識してイカのように足をぴったり閉じることだ。

キックの効果としては、バランスをとるため、下肢を浮かすため、推進するため、ローリングを加速するため等がある。それぞれの必要に応じて、そしてその目的に適うやり方で蹴ってもらえばよいのだが、目的によって、それぞれ、蹴る方向や強さやタイミングが異なる。

(1) バランスをとる

バランスについては、基本的には身体の姿勢と両腕の位置や動きで安定性を保つのが原則であると思う。しかし、なおかつ、左右にぶれるとなれば、これを緩衝する方向で、また、そのようなタイミングで打つことになるので、一般的な解はない。

ただし、これを行うと、必ずしも、他のキックの効果を期待することはできなくなる可能性がある。

(2) 下肢を浮かす

下肢を浮かすのは、これまで述べてきたように、水平姿勢において体重を前方に持ってくることが有効である。具体的には、両腕を前方に置く時間を長く取ること、肋骨を上げることなどである。それで、充分下肢は浮く。それでも足りない場合には、水面に向かった抗力や揚力が生まれるようなキックを行う。単純には、身体全体を使って膝と足首をしなやかに波打って真下後方に蹴るということになる。

しかし、その場合は、単純に真下に蹴るよりは、内股で蹴ることを奨める。その目的は、下肢を浮上させ推力を効果的に増進することであり、揚力を発生させ、後方下向きへの力を得るキックとしたいためである。

その方法だが、艪のような動きで蹴るのだ。個人の足の形状や泳ぎのローリングの角度によって、足の動きも変化するだろうが、基本は、以下である。

・力を抜いて蹴るときの足の甲の面が、水面下で左右に艪と同様な迎角を作るように調整して蹴る。このようにすると、垂直の「ドン」と蹴るキックに比べて、ゆっくりとじわっと、長い時間をかけて蹴ることができるようになる。

・蹴る時には、腹圧を、ぐっとかける。

・蹴った後の足は、その足裏を、もう一方の足の甲にぺたっと付けて、水流を妨げないようにする。

(3) 推進する

キックは、基本的に進行方向と直角に動かすものなので、推進するためには、揚力による後方へ分力を得なければならない。そのためには、やはり、スクリューや艪の動きが中心である。

基本は、足の甲に水を乗せるような動きを追求することになるが、ビートが速ければ前進の推力も得られるが、ここでは、2ビートに限定して、しかも、ゆったりとしたテンポで泳いでいることを前提としている。そのために蹴る方法としては、写真のような、次の方法が奨められる。

・ 膝を大きめに緩めて、後方に向けて蹴る。

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これは、当然、後ろ向きに水を押しやる意思を明確にするということだ。だから、後ろに蹴る。そのためには、膝を大きく曲げても良い。ただし、腰や背中は反らせないで、むしろ猫背になるくらいの気持ちでよい。蹴る感じは、ドーンと蹴るよりは、ズズドーンと加速して蹴り、最後までは蹴らない。これは、無用な泡(渦)を作らないためであり、効果的に蹴ったあと最後は水に任せるといった思いを込めるのだ。

こうして蹴ると、足首の軌跡は、細長い楕円を描くことになり、推力は大きくなる。また、身体を前にのめるように回転させる効果もある。

蹴った後の足は自然に戻るので、両足をぴったり揃えること(蹴った後、足首を重ねてグライドする場合も含めて)。ただし、膝を伸ばすために緊張させるのではなく、膝は少し緩むくらいでも閉じてさえいれば、リラックスした姿勢の方が良い。最初は、ぴたっとつけていると大きく蹴るのに間に合わないこともあるだろう。

このキックにも、名前をつけておいたほうが参照しやすいので、ゆっくり歩くようなキックということで、

「散歩キック」

と呼んでいる。

このキックはいつもより力を込めることになるので、長く泳ぐと、そこそこ疲れてくるかもしれない。当然、速度が上がると、抵抗はその2乗に比例して大きくなる。そして、足も腕も2乗で頑張らなければならなくなる。例えば、25mを35秒で泳いでいるところを、25秒に縮めようとすれば、いつもより2倍くらいのエネルギーが必要になる計算だ。

「(2)下肢を浮かす」で奨めたキックでも、うまく足で迎角を作ることができれば推進力となるし、浮かすだけしかできなくても、腹を締めていれば身体の形状抵抗が少なくなるので推進力に資することができる。それゆえ、このズズドーンというキックではなく、艫のような内股キックが還暦スイマーには適しているかもしれない。

(4) ローリングを加速する

ローリングの効用については、15.の記事ですでに書いた。

キックはそのローリングを加速するためには実に効果的な手段だ。左右に180度反転する深い回転では、キックを使う方が、よりラクに回転のスピードをコントロールできる。

この場合は、常に、プールの底に近い下側の足でキックする。

あるいは、やぎロールなどで、ドルフィンに近いキックをする場合でも、下側のキックを強く行う。

ただし、背泳ぎでは上下逆になるので、ローリングするためには上側の足を蹴る。

2. 各論

(1) 「らくらく背泳ぎ」での内股キック

らくらく背泳ぎでも2ビートを推奨した。その方が、キックなしよりは、はるかにラクで、ローリングも加速することができ、後方へのプッシュにも資するからである。

キックのタイミングは、リカバーする腕と同じ側の足を蹴る。すなわち、力を込めるタイミングは、プル、リカバー、キックが同時である。そ の方が、わかりやすいし、力を入れやすい。逆に言うと、動きは一瞬であり、その他の時間は殆ど弛緩しているのである。だから、疲れず、ラクなのである。

具体的な蹴り方であるが、クロールの場合には片足の膝を前に緩めてからするどくしなやかなキックを繰り出したのに対し、ここでは、少し膝をゆるめて、足首が沈んだ状態から、内股気味に蹴る。ローリングの最大期であるから、蹴る足は上側(水面に近い方)で、蹴る方向は横斜め上で、これが次のローリングを速くする効果を生む。また、蹴っている時間が長くなるので、安定が良くなる。さらに、蹴った後、左右の足首を重ねてしばらくグライドするのが良い。これは、まっすぐの姿勢を安定させると共に、足回りの水流を滑らかにし、ローリングもスムーズに進行させる効果がある。

もっとキックで前進力をつけたい人であれば、自分の足首の柔軟性と相談して、なるべく後方に蹴るような角度を工夫したらよいだろう。

(2) 「円月泳法」での内股キック

下肢を浮かす艫のようなキックを円月泳法に適用すると、非常に気持ちの良いバウンドと共に、ふわっと飛ぶような下肢の浮遊感を味わうことができる。

円月泳法では、腕が描く円弧が、非常にゆったりした周期で回り、とりわけ、腹から水面に向けて滑らかに腕を抜き去る動作が心地よく長い。それゆえ、この艪のような時間の長いキックがなじむと思われる。

キックのタイミングは片腕を前に突き込む時に、対角の足を「内股で」しなやかに蹴り、すぐ両足先をぴったり合わせて抵抗をなくす。これによってローリングが早く行われ、上体から下肢へと波のようにうねる身体で加速することができる。また、内股で蹴ると、蹴っている時間は、真っ直ぐ打つ時に比べて長くなり、下肢を水面に浮きあがらせる力が得られるため、リズミックに浮遊感を感じられて、気持ちが良い。

また、ビートを鋭く打てば、必ず、腹筋をしめる効果がある。円月泳法では、殆ど身体は弛緩させているが、キックの一瞬だけ緊張させる。それによって、キックによるローリングの加速、効果的なプル、そしてまっすぐ伸びた身体を実現している。背を反らせないように、できれば丸めるくらいの気持ちが必要だ。キックしたの脚は、力まず、抵抗のないように足をすぼめた形がよいのだが、膝はすこし緩んでいるくらいの余裕があって良い。

前進の加速が欲しいときは、この内股キックよりも、斜め後方に向けた大きな蹴りの散歩キックが効果的だ。この場合は、膝を大きく緩めてしなやかに後方に向かって蹴る。方向は、真っ直ぐでも内股気味でも良 い。その方向は、ローリングによっても左右されるし、水の上に出ると泡を生むので、適切な角度で調節すれば良い。このキックでも、背や腰は反らず、丸め気味にしておくこと。ただし、蹴る力が強くなれば、それだけ疲れてくるだろう。

 

(3) 「招き猫泳法」での推進キック

円月泳法でも、斜め後方に向けた推進キックが効果的なことは前項で述べたが、「19. らくらくクロール その6 招き猫泳法」で紹介した招き猫泳法では、断然このキックだ。この泳法では、身体を浮かすこと、前進させることに力点を移しているので、内股キックでは甘い。

 

ともあれ、どのような泳ぎをするにしても、キックの方法や効果については、個人の足首の柔軟性に負うところが大きい。それゆえ、この記事を参考として、ご自分にあった方法を開発していただければよいと思う。

 

【泳ぎ理論考察】

 

記事分類 目次 - やぎさんのオリジナル泳法のすすめ

17. 効率的なプル :  ローエルボーへの誘い その2 

このブログの内容を、体系的にまとめて、次のウェブサイトで公開している。

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前回記事の続きとして、この記事では、われわれ還暦スイマーにとっての効率的なプルとは何かを考えてみよう。 

1. 水を最大に捉えることができる瞬間のプルの形は?

異論のないと思われる形は、次のような形であろう。

直立して両手をまっすぐ前方に水平に突き出し、手の平を下に向けて欲しい。次に、力を入れずに、自然に、肘を曲げると、肘から先の前腕は肘を中心に水平面で回転するであろう。

このとき、肩から伸びる二の腕、肘から伸びる前腕及びその先の手の平が作る平面は、水平になっている。今、真上から雨が降ってくれば、一番たくさん腕がぬれることになる。なぜならば、一番広い面積で雨を捉えているからである。

水中で泳ぐときも同じである。この腕の形であれば、腕全体が、後方に向かった垂直の壁となって押せる状態となる。それは、逆に、水流の速度以上に速くプルしなければ、前方からの水流を、まともに、二の腕と前腕の表及び手の甲で受けることにもなる。

ともあれ、この腕の形が、プルにおける一番効果的な瞬間だ。

2. 一番疲れず、ラクにプルできる形

前記1で提示した、効果的なプルの瞬間の形は一意ではない。なぜなら、肘を曲げる角度はどうあってもよいからだ。

ここで、プルする場合、広背筋や大胸筋を使って、二の腕を後方に押すことになるが、その時、手の先が身体から離れれば離れるほど、てこの原理で、必要な力は大きくなるはずだ。吊り輪で、十字懸垂から身体をそのまま引き上げるのと、腕を曲げて引き上げるのでは大違いである。

それゆえ、前腕はなるべく胴体の近くを通過させたほうがラクであるといえる。

また、間接の可動範囲から考えても、この方が利点があるのにも気がつくはずだ。つまり、前腕は、胴体に近いところにある方が、遠くにあるよりも、間接に負担をかけずに、かつ、力強く動かすことができる。また、間接にとって、腕は前方にあるより、胴体の前にあるほうが無理がない。

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上腕三頭筋を使うと疲れるので、プルで力を入れるのは腹までで、あとは力を入れない。したがって、腕を伸ばす力を入れず、プッシュはしない。

3. 水を逃がさないプルの形:省エネプル

一回で力強いプルを行う場合は、大きい面積で、長く、速く行う必要がある。

短距離型の人は、これを追及すればよろしい。

しかし、われわれ還暦スイマーは、ゆっくりでも長く、ラクに泳ぎたい。疲れて水に漬かって休んでいると冷えてしまうし、有酸素運動にもならないからだ。

だから、いくら、効果的であるといっても、一瞬でも思い切り力を入れるわけにはいかない。やはり、ゆっくりと無理のない動きの中ですこしメリハリをつけるといった具合にとどめたいものだ。

そのようなやり方で、そこそこに速く泳げたらよいものである。

では、実際に、どのようにしたらよいだろうか?

その答えは、捉えた水を、なるべく逃がさないようにし、懐に掻きこんだ水を一網打尽に掻きだせばよいのだ。

そうするためには、身体から離れたストレートプルやS字プルのような形ではなく、艪やプロペラのように、揚力を利用した両腕、胸、腹などをなぞるようなプルの軌跡を描けばよいことになるのではないか。これならば、ゆっくり動作を行っても、効果的に前進できるであろう。

そもそも、ストレートプルでは、われわれ老人にとって関節への負荷が高いだけでなく、水流より遥に速く水を掻かなければ効果がない。その点、揚力を利用する場合には、迎角をつけて水流に直角に掻けばよいので、ゆっくりしたストロークで少ないエネルギーで済む。

4. 効果的なプル

さて、これまで考察してきたことから効果的なプルを総合的にまとめてみよう。

プルで一番、われわれにとって重要ことは、無理をせず、一番効率の良いことだけを重点的に行うということだ。

そうとなれば、答えは簡単である。次のようにすればよいのだ。

(1) プルで力を入れるときは、胴体に対し腕を直角にし、前腕を胴体に近づける。

(2) 効果的なプルの形の時だけ力を入れる。

(3) 水を逃がさないようにプルの軌跡が、もう一方の腕、腋、腹をなぞるように動かす。

では、実際にはどうやればよいのか?

このことは、円月泳法のプルを想定してみると、その効用が解りやすいと思われる。

円月泳法では、プルする時のその指先を、もう一方の腕の手先から腕の線を沿って腋窩、胸、腹となぞるように円形に描いてプルを行う。

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その間の前腕は手の先まで弓なりになり、目の前にほぼ水平に保つのであるが、これによって、艪やスクリューのような揚力中心のプルとなる。この時、手の平は、意識すれば必ず前方からの水流に直角に保つことができるだろう。円月の円形プルで、流れに直角にプルをする。これは、実感としては円形のプルだが、前方からの水流の影響を差し引いて、揚力と抗力を最大効率で得られる迎角でプルすることができるのである。

さらに、このプルでは、プルの腕が掻いていく水は、その前半では、もう一方の腕に遮られて負圧のために渦を巻く水塊であり、後半では、頭や首の凹凸によってできる渦巻きや、胸や腹と接した水流が粘性抵抗によって低速になった水塊である。

このように、水流が身体に当って抵抗となり、体表付近で遅くなった水流は、その分、泳ぎの速さを鈍らせているのだが、そのロスは、円月泳法のプルでは、低速の水を掻くことによって、ちゃんと取り返しているのだ。流れの速い水を押すより、流れの遅い水を押すほうが力が効率的に使えるのは自明であろう。

そのプルの動きについては、もう少し具体的に説明しておこう。

円月泳法のプルは、その低速になった水塊を腕全体を長くしなやかに使ったスクリューの羽根で、目一杯のローリングを利用して、長い時間をかけて長い距離を回していくものだ。このスクリューの羽根にあたる斜めの迎角を持った腕は、一方を身体で囲まれて片側には逃げ場のない低速の水塊を押すことになり、その結果、流れに対する腕の前方と後方に負圧と効力を効率的に生じさせることができ、これらによって大きな揚力が得られている。

また、水上にゆっくり抜き去っていく手の平は、小指から水流を受ける形になって、一番効率の良い揚抗力を生んでいる。そして、抜き去った腕はリカバーの腕として半円を描いて前方に振られ、前方水面にスプーンのように刺さっていくが、この沈み込む過程でも揚力が得られている。

こうして、円月ストロークは、あたかもロータリーエンジンのようにスムーズな推力を生んでいるのである。

なお、円形のプルに関して、先ほど、前方からの水流の影響を差し引いて、揚力と抗力を最大効率で得られる迎角でプルすることができると書いた。この適切な実質の角度は30度程度である。円形のプルでは、この迎角で 前半を掻き、胸の前では暫時ストレートプルになって最大抗力を得ることができ、後半のプルで斜めに抜き去るまでの迎角も最大効率の揚抗力を得ることができ る。

ただし、この最大効率を得られる迎角は、当然、泳速によって変化する。自分にとっての見かけのプルの角度を泳速によって補正 しなければならないからだ。一番効率が高い迎角の目安を30度程度とすると、速く泳ぐならば、円月の円弧はもう少し縦に伸ばして楕円にしていく必要があるだろう。手の平を常に流れに直角に保っていると仮定すると、円形であれば45度くらいで掻く意識だが、仮に、壁を蹴らずに、25mを30秒、16ストロークくらいで泳ぐならば、それを縦に伸ばす。水流に対して直角に保った手の平や前腕を、見かけで斜めに降ろしていく時の水に対する角度を50度くらいになるような楕円にすれば良い。

ただし、これは、われわれ還暦スイマーの低速の場合だ。

より高速を目指すならば、揚力をより効果的に使っていく必要がある。

その場合には、手の平をなるべく真っ平らに、むしろ、反らせるくらいにするのだ。

反対の肩付近まで引き込んだ手の平を、円月に抜き去っていくときに、この平らな手の平で、小指から親指に流れていく水の滑らかな抵抗を意識する。斜めに滑らせるための腕の力は軽くてすむが、手の平にかかる揚力、すなわち、身体を前に進める力は力強く感じるはずだ。つまり、固い水の壁を撫でている感じだ。これを感じられるようになるためには、指の間の隙間を開けないこと、手の平の角度の小さな違いを感じるようにする。

しかし、この手の平を平らに保つのは、結構疲れるものだ。

なお、このようにする場合、前半のプルにおいても、肩前方に伸ばした腕を内転し、平にした手の平でトランプのカードをめくるようにうちに向け、反対側の肩まで引きこむようにするようにしたほうがよい。このときも平らな手の平であるが、水の流れは親指から小指に抜けることになる。

これは、常に斜めに押しているので、ここにはキャッチに相当する概念はない。連続して水を切って水の壁を撫でるだけだからである。

この動きは、プル(引っ張る)という感じではない。円月プルは、弧を描く運動であり、水を切るというか、撫でるような運動なのだ。前半は、手の平の向きを、若干内側に、後半は外側に、僅かではあるが傾けたほうが抵抗の感じが良い。また、指先の方向を後半は若干前にとったほうが下肢が浮きやすい。

5. ローエルボーへの誘い 

ここで説明してきたプルの形は、これまで紹介してきたらくらくクロールで取り入れることができている。ただし、招き猫泳法は、直線プルなので、これとは異なるが。

そして、既にお気づきであろうが、これらは、全て、極端なローエルボーである。そして、これらの泳ぎは、大きなローリングを前提にしている。

ローエルボーでなければ、ラクにならないからだ。それに、キャッチするためには、ハイエルボーでなければならないという理屈はないだろう。どの方向に肘を曲げても、ちゃんとキャッチはできる。そうであれば、楽な方向にするほうが良いに決まっている。

何度も言うが、このブログは、少しでも速く泳ぎたい人、疲れても構わない人、若く五体満足で関節の柔軟な人のために書いているのではない。

身体が固くなっても、どこかに支障があっても、とことん、怠惰に泳いでも、なおかつ、かっこよく泳げる方法を目指しているのだ。片手や片足でも泳げるようにである。

ところで、中でも、一番のローエルボーで、かつ、省エネ泳法は、鉤腕泳法であろう。最小の流水抵抗と最大効率のプルを実現していると思うからだ。

そして、特にお奨めするのは、鉤腕のやぎロールである。そして、これを身体全体を緩やかに波打つドルフィンで行うととてもリラックスできること請け合いだ。

やぎロールでは、身体全体を使った上下のピッチを行う。

これは、浮きと沈みによる推進力を得るためだけではない。身体のアンバランスの矯正と、とりわけ、息継ぎがらくになることを狙っている。

なぜなら、片側ずつ二回のストロークを行い、左右交互に息継ぎをするからである。そして、息継ぎは、イルカのように、勢いよく浮かび上がってきた時に行い、かつ、最大ローリング角で顔は真上まで向くこともできるので、息継ぎに何の苦労もないのだ。片手が不自由な場合は、ローリングしなくても片側だけでもOKだ。

これだけラクでも、壁を蹴らずに、25mを30秒、12ストローク程度で泳げる。

こうした泳ぎに、ハイエルボーなどは関係ない。結果的にローエルボーになるが、もちろん、肘を低くするのが目的ではないが、低くすることで、楽になり、下肢も浮くという一石二鳥の効果もある。関節に無理な力をかけないこと、疲労を招かないこと、キャッチがうまくできれば、ハイであろうがローであろうが関係ない。

総合的にみて、結果的なローエルボーへの誘いである。

6. 下肢を持ち上げる効果のあるプル、そうでないプル

 前記したが、ヤギロールでは、1回のローリングで2回のプルを行う。最初のプルは、もぐるプルであり、2度目のプルは浮き上がるプルである。

したがって、それらのプルの仕方は少し異なる。

もぐる時は、頭が水底前方に向かい、プルする腕は、胸から下に来たときに力を加える。浮く時には、それよりも前、すなわち、頭上に着水した当初から力を加える。そうするとプルは斜め下後方に押し出す格好になるので、もしこれを極端に行えば勢いよく、浮上できる。

または、手の平の角度を変えて、浮き沈みに方向に揚力を発生させることもできる。

こうした動きをうまく調節しながら、速さや浮き沈みを調節して欲しい。

なお、このブログで紹介する「らくらくクロール」において、常に右か左の一方で息継ぎをする場合は、この「浮き、沈み」のリズムを取り入れると良い

すなわち、息継ぎをするときに浮上し、息継ぎがない側では沈み込むのだ。こうすると、息継ぎが特段に楽になるし、単調な泳ぎにリズムが入り、イルカになったような気持ちよさがある。

左右のバランスは大事だ。特に、抵抗を少なくするためには、真っ直ぐでなければならない。だから、できるだけ、左右で満遍なく息継ぎをするのがよい。そのためには、やぎロールのような、両側均等に息継ぎをする泳法を薦めたい。

そういういった意味では、左右の側にはこだわらず、「浮き、沈み」のリズムは、息継ぎをするときに浮上し、息継ぎをしない時には沈み込むようにすれば良いだろう。

 

 

【泳ぎ理論考察】

 

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