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やぎさんのオリジナル泳法のすすめ

楽に、静かに、できれば速く、還暦すぎてのラクラク健康スイミング (円月泳法、鉤腕泳法、八の字泳法、招き猫泳法、らくらく2ビート背泳、やぎロール、イルカ泳ぎ等)

15. ローリングの効用

ローリングの効用

1. らくらくクロールでの90度ローリングの奨め

シリーズらくらくクロールでは、円月、クワガタ、鉤腕、下段突き、万歳泳法等の泳ぎかたを紹介してきた。これは、どれも大きなローリングが可能であるが、とりわけ、円月とクワガタ泳法をのぞく泳法では、90度ローリングを前提とした。

その理由は、それらの泳ぎでは、身体と四肢が一平面になる姿勢を基本としており、90度以下では、ストリームラインの中心軸を左右にずらす無用の力が働く虞があるからである。しかし、何よりも、大きなローリングを行うことには、とても推奨できる利点があるからである。それらを、以下に紹介しよう。

(1) 真っ直ぐなストリームラインをつくりやすい

らくらくクロールでは、基本的にストリームラインは水面に水平で、進行方向に真っ直ぐを基本としている。もちろん、一番水の抵抗が少ない形だからである。

ローリングを行うと、軸の歪みを自分で認識しやすくなることに気がつくと思うが、軸が歪んでいると回り(ロールし)にくいものである。それゆえ、特に大きなローリングを行うと、真っ直ぐの姿勢を保持しやすく、軸の歪みを矯正しやすくなる。

(2) ゆっくりしたペース/テンポで泳ぐことができる

大きなローリングを行うと、それに応じたゆっくりした周期でロールすることができる。とりわけ、90度ローリングは、安定した形であるので、失速するまでは、すきなだけグライドの時間をとることができる。息継ぎの時間がゆるすかぎり、ゆっくりとしたペースで泳げば、必要なストローク数も減る。いずれのらくらくクロールでも、25mを壁を蹴らずに、10〜12ストロークくらいで泳ぐことができる。

(3) 身体全体をスクリューにすることができる

大きなローリングで行うプルは、腕が自然に身体にまとわりついたような、円月泳法のプルの形になる。この形は、身体の中心、すなわち進行方向の中心線を長い軸としたプロペラやスクリューの形になっている。したがって、意識的にプルしていなくても、ローリングをしていることによって、水を押すことによる抗力や揚力を得て、これらが推進力となっているのである。

(4) 重力/浮力を利用して泳げる

ローリングを行うと、身体が丸太のように真っ直ぐになるのは(1)で説明した。このとき、水面に平行に進むのであれば、抵抗の少ない姿勢でグライドできる。

しかし、このとき、下降または上昇する動きを伴う場合には、水の抵抗を受ける。この抵抗は、身体を真っ直ぐ保ったまま、頭から下降する(沈む)ときには、水の抗力と揚力によって、前進する力が生まれる。また、頭から上昇する(浮く)ときには、やはり、同様に前進する力が生まれるのである。

したがって、これらの、浮き沈みを、意識的かつ効果的に行うことによって、前進力を加えることができるだけではなく、とかく、単調になりがちな水泳の運動を楽しくすることも可能である。

これを縦横無尽に活用しているのが、やぎロールである。

2. 大きなローリングに問題はないのか?

このように、ローリングの効用は多くあるが、一般に、あまり奨められていないようにみえるのはなぜか?

それは、単純だ。

(1) 高速泳法には向かない

繰り返し述べているが、私の奨める泳法は、らくらく泳法である。それゆえ、もとより、高速で泳ぐ人向けではない。そこそこの速さで良い人には、それなりに適切な泳法があるだろうと思って、研究しているらくらく泳法なのである。

その結果として、ローリングは、ゆっくり、でも力を入れずに効率的に進むしくみとして、お奨めしている。当然、ローリングするのには時間がかかるし、大きなローリングをしながら、フラットで泳ぐときの速いピッチでプルすることはできない。

(2) 関節へ無理な力がかかる場合がある

仮に、腕を肩より後ろに回したり、ローリングによって、そのように肩が後ろに残ったりするような腕の動きをすれば、肩や肘の関節や靭帯に無理がかかる。例えば、右手を外旋したまま右に大きくローリングを行うなどである。端的にいえば、従来のクロールの動きをしながら、大きなローリングをしてはいけない。

それに引きかえ、らくらくクロールで紹介してきたような肩や肘に負担をかけない動きをするのであれば、思い切りローリングすることができるし、また、そうすることに利点や意味があるのだ。

3. らくらくクロールの基本姿勢とローリングの関係

(1) 身体から横に突き出た部分の抵抗について

身体の平面より突き出た部分は、その部分が水流に押されることによって、泳ぐときの中心軸を重心を中心として回転させる力を生んでしまう。

円月とクワガタ以外のらくらくクロールの泳法では、基本姿勢を、肩関節で楽に動かせる範囲で一平面に収まるようにしている。しかし、一平面であっても、実はプールの底の中央線に向かって腕が伸びているので、ここについては水流の抵抗をちゃんと受けている。その結果、身体を回転しようとする力を受けているのである。しかし、これは、幸いなことに、というより意図的に、下肢を水面に向かって持ち上げる力として働くようにしている。だから、この抵抗は、泳ぎをラクにしているので、この場合は役に立っているのである。(ここでの一平面とは、水面下の部分に限っている。水上のリカバリの手は水の抵抗を直接受けないから厳密に一平面に収まらなくても良いのである。)

それでは、円月やクワガタ泳法の基本姿勢はどうなのか?

実は、これらの泳法の姿勢は水中で一平面に収まらない。すなわち、上に自然に挙げた腕の肘が身体の前面(腹側)に出ているのだ。肩関節の可動域に限界があるからだ。それに、円月泳法やクワガタ泳法でのこの基本姿勢は、常に水底を向いているわけではない。

そうすると、これらの泳法では、その時々のローリング姿勢で、身体の軸がブレるのではないか、と思われるであろう。

ところが、どっこい、全くブレないのである。

それはなぜか?

(2) らくらくクロールの安定性はどのように実現されるか?

前記したように、円月にしても、クワガタにしても、その基本姿勢は、両肘を軽く曲げた形になっている。(実は、クワガタ泳法の腕は、円月泳法の腕を前方に伸ばしたものに過ぎない。)そして、この肘はローエルボーとなって水底の前方に向かって突き出されている。手の位置は、額の前あたり(円月)かもっと前方(クワガタ)である。

ここで、この腕の形を子細に見てみると、進行方向すなわち水流に対し、前腕の外側(尺骨側)と上腕二頭筋の部分が水流に向かって抵抗を受けるようになっている。それぞれの部分は、水流の抵抗の分力によって身体を回転させる力となるのであるが、それらの向きは、前腕と上腕で反対になっていて、結果的に回転する力が相互に打ち消されているのだ。

もちろん、この肘の曲がりは、全体として抵抗として推進力を殺ぐ要素とはなる。しかし、水底に向かって伏せた状態のときには、下肢を浮かせる効果としても機能するし、そもそも、「そこそこの速さ」で泳ぐ限りでは、あまり気にするほどの抵抗ではなかろう。

むしろ、この円月やクワガタの手の形によってできる抵抗は、泳ぐ姿勢を微妙に調整し安定させるのに実に役立っているのだ。

円月泳法においては、さまざまな姿勢をとることが可能だと書いたが、これを許容できるわけは、この調整機能にある。さらに、この静的な姿勢の調整に加えて、動的な円形プルのスムーズな平面的な動きによって、全くブレない姿勢を実現しているのだ。

このように、らくらくクロールでは、どの泳ぎでも何の問題なく安定しており、例え、キックをしなくても、ラクに泳げる結果となっている。

 4. らくらく背泳ぎでのローリング

背泳ぎでも基本は、らくらくクロールと同じであるが、背泳ぎでは、仰向けになっているゆえに、腕の可動範囲が問題になる。

(1) 身体の前面での効率的なプル

プルのとき、腕を後ろに引くのには注意が必要だ。胸の平面の延長線上より後ろに持って行ってはならないと私は考えている。それは、肩の可動範囲を超えて無理をかける可能性があるからだが、それに加えて、力が入りにくいと考えるからだ。だから、常に、顔を正面に据えて腕が視野に収まるように動かすよう奨める。

それゆえ、らくらく背泳ぎでは、リカバーした腕の入水は、手の平を下に向けないで、自然に下ろしていき、ローリングとともに水没させる。そして、水を上向きに掴んだら、そのまま、腕相撲のように胸の前に肩甲骨を使って前腕を倒していき、最後に大腿のところで下向きに水をポイと捨てる。

この腕の動きは、身体の前面で行われ、身体に近いがゆえに、肩甲骨にリードされて広背筋や大胸筋を使って疲れずに、関節に負担をかけずに、力を込めてゆっくりプルでき、かつ、より身体の近くの滞留する水流を掻くことができるので効率的だ。

(2) ローリングは至福の時間

それゆえ、腕相撲のような動きができるところまでローリングをすることが必要である。また、このローリングの時間が伸びのあるグライドの時間ともなっており、水の上を乗り越えて滑っていくかのような感じを持てる至福の時間である。