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やぎさんのオリジナル泳法のすすめ

楽に、静かに、できれば速く、還暦すぎてのラクラク健康スイミング (円月泳法、鉤腕泳法、八の字泳法、招き猫泳法、らくらく2ビート背泳、やぎロール、イルカ泳ぎ等)

17. 効率的なプル :  ローエルボーへの誘い その2 

前回記事の続きとして、この記事では、われわれ還暦スイマーにとっての効率的なプルとは何かを考えてみよう。 

1. 水を最大に捉えることができる瞬間のプルの形は?

異論のないと思われる形は、次のような形であろう。

直立して両手をまっすぐ前方に水平に突き出し、手の平を下に向けて欲しい。次に、力を入れずに、自然に、肘を曲げると、肘から先の前腕は肘を中心に水平面で回転するであろう。

このとき、肩から伸びる二の腕、肘から伸びる前腕及びその先の手の平が作る平面は、水平になっている。今、真上から雨が降ってくれば、一番たくさん腕がぬれることになる。なぜならば、一番広い面積で雨を捉えているからである。

水中で泳ぐときも同じである。この腕の形であれば、腕全体が、後方に向かった垂直の壁となって押せる状態となる。それは、逆に、水流の速度以上に速くプルしなければ、前方からの水流を、まともに、二の腕と前腕の表及び手の甲で受けることにもなる。

ともあれ、この腕の形が、プルにおける一番効果的な瞬間だ。

2. 一番疲れず、ラクにプルできる形

前記1で提示した、効果的なプルの瞬間の形は一意ではない。なぜなら、肘を曲げる角度はどうあってもよいからだ。

ここで、プルする場合、広背筋や大胸筋を使って、二の腕を後方に押すことになるが、その時、手の先が身体から離れれば離れるほど、てこの原理で、必要な力は大きくなるはずだ。吊り輪で、十字懸垂から身体をそのまま引き上げるのと、腕を曲げて引き上げるのでは大違いである。

それゆえ、前腕はなるべく胴体の近くを通過させたほうがラクであるといえる。

また、間接の可動範囲から考えても、この方が利点があるのにも気がつくはずだ。つまり、前腕は、胴体に近いところにある方が、遠くにあるよりも、間接に負担をかけずに、かつ、力強く動かすことができる。また、間接にとって、腕は前方にあるより、胴体の前にあるほうが無理がない。

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上腕三頭筋を使うと疲れるので、プルで力を入れるのは腹までで、あとは力を入れない。したがって、腕を伸ばす力を入れず、プッシュはしない。

3. 水を逃がさないプルの形:省エネプル

一回で力強いプルを行う場合は、大きい面積で、長く、速く行う必要がある。

短距離型の人は、これを追及すればよろしい。

しかし、われわれ還暦スイマーは、ゆっくりでも長く、ラクに泳ぎたい。疲れて水に漬かって休んでいると冷えてしまうし、有酸素運動にもならないからだ。

だから、いくら、効果的であるといっても、一瞬でも思い切り力を入れるわけにはいかない。やはり、ゆっくりと無理のない動きの中ですこしメリハリをつけるといった具合にとどめたいものだ。

そのようなやり方で、そこそこに速く泳げたらよいものである。

では、実際に、どのようにしたらよいだろうか?

その答えは、捉えた水を、なるべく逃がさないようにし、懐に掻きこんだ水を一網打尽に掻きだせばよいのだ。

そうするためには、身体から離れたストレートプルやS字プルのような形ではなく、艪やプロペラのように、揚力を利用した両腕、胸、腹などをなぞるようなプルの軌跡を描けばよいことになるのではないか。これならば、ゆっくり動作を行っても、効果的に前進できるであろう。

そもそも、ストレートプルでは、われわれ老人にとって関節への負荷が高いだけでなく、水流より遥に速く水を掻かなければ効果がない。その点、揚力を利用する場合には、迎角をつけて水流に直角に掻けばよいので、ゆっくりしたストロークで少ないエネルギーで済む。

4. 効果的なプル

さて、これまで考察してきたことから効果的なプルを総合的にまとめてみよう。

プルで一番、われわれにとって重要ことは、無理をせず、一番効率の良いことだけを重点的に行うということだ。

そうとなれば、答えは簡単である。次のようにすればよいのだ。

(1) プルで力を入れるときは、胴体に対し腕を直角にし、前腕を胴体に近づける。

(2) 効果的なプルの形の時だけ力を入れる。

(3) 水を逃がさないようにプルの軌跡が、もう一方の腕、腋、腹をなぞるように動かす。

では、実際にはどうやればよいのか?

このことは、円月泳法のプルを想定してみると、その効用が解りやすいと思われる。

円月泳法では、プルする時のその指先を、もう一方の腕の手先から腕の線を沿って腋窩、胸、腹となぞるように円形に描いてプルを行う。

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その間の前腕は手の先まで弓なりになり、目の前にほぼ水平に保つのであるが、これによって、艪やスクリューのような揚力中心のプルとなる。この時、手の平は、意識すれば必ず前方からの水流に直角に保つことができるだろう。円月の円形プルで、流れに直角にプルをする。これは、実感としては円形のプルだが、前方からの水流の影響を差し引いて、揚力と抗力を最大効率で得られる迎角でプルすることができるのである。

さらに、このプルでは、プルの腕が掻いていく水は、その前半では、もう一方の腕に遮られて負圧のために渦を巻く水塊であり、後半では、頭や首の凹凸によってできる渦巻きや、胸や腹と接した水流が粘性抵抗によって低速になった水塊である。

このように、水流が身体に当って抵抗となり、体表付近で遅くなった水流は、その分、泳ぎの速さを鈍らせているのだが、そのロスは、円月泳法のプルでは、低速の水を掻くことによって、ちゃんと取り返しているのだ。流れの速い水を押すより、流れの遅い水を押すほうが力が効率的に使えるのは自明であろう。

そのプルの動きについては、もう少し具体的に説明しておこう。

円月泳法のプルは、その低速になった水塊を腕全体を長くしなやかに使ったスクリューの羽根で、目一杯のローリングを利用して、長い時間をかけて長い距離を回していくものだ。このスクリューの羽根にあたる斜めの迎角を持った腕は、一方を身体で囲まれて片側には逃げ場のない低速の水塊を押すことになり、その結果、流れに対する腕の前方と後方に負圧と効力を効率的に生じさせることができ、これらによって大きな揚力が得られている。

また、水上にゆっくり抜き去っていく手の平は、小指から水流を受ける形になって、一番効率の良い揚抗力を生んでいる。そして、抜き去った腕はリカバーの腕として半円を描いて前方に振られ、前方水面にスプーンのように刺さっていくが、この沈み込む過程でも揚力が得られている。

こうして、円月ストロークは、あたかもロータリーエンジンのようにスムーズな推力を生んでいるのである。

なお、円形のプルに関して、先ほど、前方からの水流の影響を差し引いて、揚力と抗力を最大効率で得られる迎角でプルすることができると書いた。この適切な実質の角度は30度程度である。円形のプルでは、この迎角で 前半を掻き、胸の前では暫時ストレートプルになって最大抗力を得ることができ、後半のプルで斜めに抜き去るまでの迎角も最大効率の揚抗力を得ることができ る。

ただし、この最大効率を得られる迎角は、当然、泳速によって変化する。自分にとっての見かけのプルの角度を泳速によって補正 しなければならないからだ。一番効率が高い迎角の目安を30度程度とすると、速く泳ぐならば、円月の円弧はもう少し縦に伸ばして楕円にしていく必要があるだろう。手の平を常に流れに直角に保っていると仮定すると、円形であれば45度くらいで掻く意識だが、仮に、壁を蹴らずに、25mを30秒、16ストロークくらいで泳ぐならば、それを縦に伸ばす。水流に対して直角に保った手の平や前腕を、見かけで斜めに降ろしていく時の水に対する角度を50度くらいになるような楕円にすれば良い。

ただし、これは、われわれ還暦スイマーの低速の場合だ。

より高速を目指すならば、揚力をより効果的に使っていく必要がある。

その場合には、手の平をなるべく真っ平らに、むしろ、反らせるくらいにするのだ。

反対の肩付近まで引き込んだ手の平を、円月に抜き去っていくときに、この平らな手の平で、小指から親指に流れていく水の滑らかな抵抗を意識する。斜めに滑らせるための腕の力は軽くてすむが、手の平にかかる揚力、すなわち、身体を前に進める力は力強く感じるはずだ。つまり、固い水の壁を撫でている感じだ。これを感じられるようになるためには、指の間の隙間を開けないこと、手の平の角度の小さな違いを感じるようにする。

しかし、この手の平を平らに保つのは、結構疲れるものだ。

なお、このようにする場合、前半のプルにおいても、肩前方に伸ばした腕を内転し、平にした手の平でトランプのカードをめくるようにうちに向け、反対側の肩まで引きこむようにするようにしたほうがよい。このときも平らな手の平であるが、水の流れは親指から小指に抜けることになる。

これは、常に斜めに押しているので、ここにはキャッチに相当する概念はない。連続して水を切って水の壁を撫でるだけだからである。

この動きは、プル(引っ張る)という感じではない。円月プルは、弧を描く運動であり、水を切るというか、撫でるような運動なのだ。前半は、手の平の向きを、若干内側に、後半は外側に、僅かではあるが傾けたほうが抵抗の感じが良い。また、指先の方向を後半は若干前にとったほうが下肢が浮きやすい。

5. ローエルボーへの誘い 

ここで説明してきたプルの形は、これまで紹介してきたらくらくクロールで取り入れることができている。ただし、招き猫泳法は、直線プルなので、これとは異なるが。

そして、既にお気づきであろうが、これらは、全て、極端なローエルボーである。そして、これらの泳ぎは、大きなローリングを前提にしている。

ローエルボーでなければ、ラクにならないからだ。それに、キャッチするためには、ハイエルボーでなければならないという理屈はないだろう。どの方向に肘を曲げても、ちゃんとキャッチはできる。そうであれば、楽な方向にするほうが良いに決まっている。

何度も言うが、このブログは、少しでも速く泳ぎたい人、疲れても構わない人、若く五体満足で関節の柔軟な人のために書いているのではない。

身体が固くなっても、どこかに支障があっても、とことん、怠惰に泳いでも、なおかつ、かっこよく泳げる方法を目指しているのだ。片手や片足でも泳げるようにである。

ところで、中でも、一番のローエルボーで、かつ、省エネ泳法は、鉤腕泳法であろう。最小の流水抵抗と最大効率のプルを実現していると思うからだ。

そして、特にお奨めするのは、鉤腕のやぎロールである。そして、これを身体全体を緩やかに波打つドルフィンで行うととてもリラックスできること請け合いだ。

やぎロールでは、身体全体を使った上下のピッチを行う。

これは、浮きと沈みによる推進力を得るためだけではない。身体のアンバランスの矯正と、とりわけ、息継ぎがらくになることを狙っている。

なぜなら、片側ずつ二回のストロークを行い、左右交互に息継ぎをするからである。そして、息継ぎは、イルカのように、勢いよく浮かび上がってきた時に行い、かつ、最大ローリング角で顔は真上まで向くこともできるので、息継ぎに何の苦労もないのだ。片手が不自由な場合は、ローリングしなくても片側だけでもOKだ。

これだけラクでも、壁を蹴らずに、25mを30秒、12ストローク程度で泳げる。

こうした泳ぎに、ハイエルボーなどは関係ない。結果的にローエルボーになるが、もちろん、肘を低くするのが目的ではないが、低くすることで、楽になり、下肢も浮くという一石二鳥の効果もある。関節に無理な力をかけないこと、疲労を招かないこと、キャッチがうまくできれば、ハイであろうがローであろうが関係ない。

総合的にみて、結果的なローエルボーへの誘いである。

6. 下肢を持ち上げる効果のあるプル、そうでないプル

 前記したが、ヤギロールでは、1回のローリングで2回のプルを行う。最初のプルは、もぐるプルであり、2度目のプルは浮き上がるプルである。

したがって、それらのプルの仕方は少し異なる。

もぐる時は、頭が水底前方に向かい、プルする腕は、胸から下に来たときに力を加える。浮く時には、それよりも前、すなわち、頭上に着水した当初から力を加える。そうするとプルは斜め下後方に押し出す格好になるので、もしこれを極端に行えば勢いよく、浮上できる。

または、手の平の角度を変えて、浮き沈みに方向に揚力を発生させることもできる。

こうした動きをうまく調節しながら、速さや浮き沈みを調節して欲しい。

なお、このブログで紹介する「らくらくクロール」において、常に右か左の一方で息継ぎをする場合は、この「浮き、沈み」のリズムを取り入れると良い

すなわち、息継ぎをするときに浮上し、息継ぎがない側では沈み込むのだ。こうすると、息継ぎが特段に楽になるし、単調な泳ぎにリズムが入り、イルカになったような気持ちよさがある。

左右のバランスは大事だ。特に、抵抗を少なくするためには、真っ直ぐでなければならない。だから、できるだけ、左右で満遍なく息継ぎをするのがよい。そのためには、やぎロールのような、両側均等に息継ぎをする泳法を薦めたい。

そういういった意味では、左右の側にはこだわらず、「浮き、沈み」のリズムは、息継ぎをするときに浮上し、息継ぎをしない時には沈み込むようにすれば良いだろう。