やぎさんのオリジナル泳法のすすめ

楽に、静かに、できれば速く、還暦すぎてのラクラク健康スイミング (円月泳法、鉤腕泳法、八の字泳法、招き猫泳法、らくらく2ビート背泳、やぎロール、イルカ泳ぎ等)

34. クロールを自分に最適化する その1(グライドとキャッチ)

 このブログの内容を、体系的にまとめて、次のウェブサイトで公開している。

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今回は、 クロールを自分に最適化するとした。

プールで、いろいろな方のクロールを見ていると、クロールの型というイデアがあって、それに自分を合わせるように努力しつつ、でもうまく行っていない、というような気がする。

人というのは、それぞれ身体も心も、異なった個性があるのだから、私は、クロールを自分に最適化したほうが良いと思う。

これからの2回の記事は、そのテーマに充てたいと思う。

この記事は、その1として、グライドとキャッチを扱う。

1. 最も抵抗の少ない姿勢

最も抵抗の少ない姿勢を理想的に描けば、身体を水平に一直線にすることだということは、誰しも疑わないだろうし、何回も私も、そう書いた。

誰でも、これができれば問題はない。しかし、それぞれの身体には、それぞれの個性がある。

それを考慮すると、一意に、一直線になろうとしさえすれば良いのだ、とは言えなくなるのではなだろうか。

多分、人それぞれにとって、水の抵抗の最も少ない姿勢が異なる可能性は高い。

しかし、ともあれ、一番抵抗が少なく、バランスが良い姿勢は次のようなものであろう。

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「顔は水底に向けたまま、なるべく身体を横に向けて、体全体は水平にまっすぐに保つ。片腕は、真っ直ぐに前方に伸ばし、できるだけ肩を前に出し大きく腋を空け、その肩を顎関節(顎の蝶番)あたりにあてる。反対に、もう一方の腕は水上に肘を高く挙げ、完全に脱力して前腕を頭のなるべく前に垂らすように肘を前方上に保つ。」

これは、多分、TIswimでいう「サメのポーズ」にかなり近いと思われるが、私自身は、TIを習ったことがないので、TIには言及しないことにする。それゆえ、ここでは便宜的に、これを「イルカの姿勢」と呼ぶことにしよう。

前方に伸ばした腕は、肩を目一杯伸ばしているので、水の抵抗は少ない。

顎関節あたりを肩に付けるのは、腕を伸ばす方向を真っ直ぐに定位するためと、顔と腕の間に受ける水の抵抗をなるべく少なくするためである。

もう一方の水上の腕は、前方に体重をかけて下肢を浮かせ、次の動作に備えて最も効果的な位置を保ち、リラックスする形をとっている。

体全体は水平に保たれて沈み、水面での造波抵抗を受けるのは肩のみとなっている。

できるだろうか?

この姿勢でグライドする時間を長く取ればとるほど、楽ということになる。

2. 自分にとって最も抵抗の少ない自然な姿勢

上記の姿勢は、抵抗は少なく、苦労なく、真っ直ぐ、腕が前に伸び、下肢が水平に浮いて入れば、何の問題もない。

しかし、多分、前に出した腕の腋の角度は、人によって各様ではないだろうか。

私にとって、真っ直ぐ腕を前に出す姿勢は、先天的に無理だが、多くの人にとっても、老人になれば、関節の柔軟性にも問題が出てくるであろう。首だって回りにくくなるだろう。

だから、この角度は、苦労しない範囲で、できるところまで開ける、ということになる。

そうすると、最も腋が開く方向に伸ばした腕の水面との角度が問題になる。

伸ばす腕の方向は、左右のバランスを考えると、真っ直ぐ前、プールの横の壁とほぼ平行を目指すべきである。つまり、上から見れば、コースロープと平行ということで、前方の深みに突きこんだ形だ。そのときの上体のローリングの角度も、人によって異なってくる。

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では、この姿勢を確認するために、事前に鏡の前でやってみよう。

大 きな鏡の前に対面し、胸を反らないようにして、両腕を下から上までゆっくり上がるところまで挙げてみよう。

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このとき、高いところを目指して肩も上がるとこ ろまで上げる(つまり、左鎖骨の左端と右鎖骨の右端を一番上まで挙げる)。そして、最も楽に肘が後ろになるような腕の位置を探そう。

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バンザイの形になるはずだ。あくまでも、胸を反らないようにする。

そして、右の腕の肘から先を脱力して手のひらを頭の上に載せよう。

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次に、鏡を両眼で真っ直ぐ見ながら、足踏みして、少しずつ身体を右に回転させていこう。

すると、左腕が鏡で鉛直に見えるところまで来るはずだ。そのとき顎は左肩に近づき、顎関節が肩に付けばそこまでで良いし、できなければ、無理なくできるところまでで良い。

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また、首の回る範囲も人それぞれであろう。もし、鏡に正対できなくなるならば、左腕が鏡で鉛直に見えまでの姿勢を優先する。

人によって、バンザイの腕の角度は大きく異なるだろう。

鏡の前のこの姿が、自分のイルカの姿勢であり、この腕の角度が自分にとって最適な腕の角度である。そして、このときの身体の回転の角度が、自分の最適なローリングの角度となる。

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一応は、そういっておこう。ただし、本当に、そうだろうか?

多分、それは、前方に真っ直ぐ伸ばした腕の水面となす角度が、どれくらいの大きさになるかによると思う。

3. 前に伸ばす腕の角度と抵抗

この、真っ直ぐ前方の深みに伸ばした腕の、水面との為す角度が、20〜30度くらいであれば何の問題もなかろうが、仮に45度くらいであれば、結構腕の上面に受ける水流の抵抗が大きく感じられるだろう。

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腕の上面に抵抗を受けることには、欠点もあり利点もある。

まず、欠点であるが、2つ挙げよう。

ひとつは、端的な話、速度を減じてしまうこと。ちなみに、極端かもしれないが、鏡の前で腕が水平までしか上がらなければ、泳ぐときには真下に伸ばすことになってしまう。これでは流れに逆らう杭のようなもので、最大抵抗を生むことになってしまう。

2つ目の欠点は、腕を保持するために疲労するということだ。腕を伸ばし、肩を上げ、これを保持するためには、僧帽筋三角筋等を動員しなければならない。これは、楽で力強いプルを生み出すための準備として広背筋や大胸筋を伸ばすという重要な役割があるのだが、これで疲労がたまってしまうのであれば困る。そうであれば、なるべく、腕を横に開いて、腋の上に体重をドーンとかけると軽減される。また、上体を捻るのではなく、腰もちゃんと傾けて丸太のように真っ直ぐにすることだ。

しかし、利点もある。ここでは、2つの利点を挙げておこう。

1つは、下肢を浮かせる効果だ。腕を下げようとする水の抵抗に対して頑張ることで、身体をつんのめらせる力が加わり、そのモーメントが下肢を持ち上げるのだ。それにより、キックしなくても水平に浮くことができるようになる。

2つめの利点は、それだけで、ある程度キャッチできているということ。つまり、水を腕にまとわりつかせているということだ。しかし、このことは、即、速度を減じる要因になっているという欠点と裏腹の関係になるので、これが大きいほど、この姿勢でのグライドでは、減速も大きいということになってしまう。

この角度が大きいからといって、胸を張り、背中を反らせて腕を挙げてはいけない。体全体の抵抗のほうが大きくなるに違いないからである。

それゆえ、私は、この角度があまり大きくて、減速、筋疲労が気になるようであれば、泳法を私の推奨する鉤腕泳法等に変えたほうが良いと思う。

では、実際に、どの辺りで、折り合うのが良いのだろうか?

40〜50度くらいであれば、それぞれ試してみて、速度もあがる見込みがあればそれでよいが、、速度も大して上がる見込みもなく、疲労がたまるだけなのであれば、他泳法に変える折り合い点とみれば良いのではないかと考えている。

さて、次に、この前方に伸ばした腕とキャッチの関係を考えていくことにしよう。

4. キャッチ

より効率的に泳ぐには、力強い推進力が必要となる。

そのためには、1ストロークで長く進むようにすることだ。

これを助ける大きな要素が、キャッチである。

いま、イルカの姿勢で、左腕を、前方に伸ばしているとしよう。

楽に、しかし、意識的に、より前に伸ばしている姿勢だ。

そ の左肘から先を、ふっと緩める。そうすると、前腕が水に押されて肘が曲がり、ゆるく弧を描いた前腕に周りの水が絡んでくる。これが、キャッチである。

肘の曲がる方向は、個人によっても若干異なるであろうし、自然に曲がる方向で良いと思う。

この腕の周りにとらえた水を、なるべく壊さないようにまとめて後方に押し出すのだ。

これを行わないで、性急にプルを行うと、スコンと空振りをしてしまう。

5. らくらくクロール(オリジナル泳法)におけるキャッチ

これまで私が、このブログで紹介してきた「らくらくクロール」では、あえて、前方に目一杯身体を伸ばさなくて良いとしている。それは、もちろん、伸びるためには結構疲れるということがあるからである。

それゆえ、前方に突き出す腕は、弧を描いていたり、肘を完全に曲げたりしている。

弧を描いた形をしているのは、円月泳法だ。

これは、その形でキャッチができている。ただし、泳ぐ速度を速めて行く場合は、次第に前方に伸びていくことになる。その場合は、伸ばした肘を一旦緩めるということが必要となってくるであろう。

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一方、鉤腕泳法では、完全に前腕を水平に真っ直ぐ前方に向けて、前腕には水の抵抗を受けないようにしている。その分、上腕(二の腕)には、まともに水流の抵抗を受けるが、下肢を浮かす効果があるから、それで良しとしている。

この腕でキャッチを行うには、どのようにするか?

単純には、やはり、肘の力を一旦抜いて、腕相撲のように前腕が倒れてくるようにする。

しかし、もう少し泳速を上げるときは、ストロークの長さを確保するために、鉤腕を前方に迎えに出す。つまり、下に直角に構えた鉤腕の肘の角度を、もっと大きくするように前に伸ばして、やおら、遠くを眺めるように前腕を額の上あたりにかざすのだ。

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他の泳法の場合も、泳ぐ速度を上げたい場合や、ストローク数を少なくしたい場合は、腕を、より前方に出し、キャッチを効率的に行うように一旦肘を緩める動作が必要となる。

もちろん、速く泳ぐためには、ピッチを速めなければならない。しかも、1ストロークで進む距離も減らさないようにしなければならない。また、楽にこれができるようでなければ、文字通り、楽しくない。

12ストロークで25mを泳げても、1ストロークに2秒以上要するならば、全体で30秒くらいはかかってしまうだろう。

これを短くしたいならば、ピッチを速くするしかない。つまり、例えば1ストロークを1秒にするということである。しかし、ピッチを速くすれば、ストローク数は増える。仮に、1ストローク1秒で、25mを20秒で泳ぐには、17ストロークくらいで泳げば良いことになる。

ピッチと1ストロークで進む距離の関係は難しいと思う。私自身、随分苦労している。ピッチを速くしても、ストローク数があまり増えないようにするには...

キャッチの時間を長く取れば、ピッチが遅くなるし、受ける水流抵抗も大きくなる。

スライドを長くし、ピッチを速くするためには、イルカの姿勢の速やかな左右転換である。

しかし、記事が長くなるので、そのことは、次回の記事に書くことにしよう。

悩みながら、キャッチとピッチの速さと疲労の具合を、時計の秒針をにらみつつ、調整する毎日である。

 

次の記事を読む 35. クロールを自分に最適化する その2(速やかな左右転換)

 

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