やぎさんのオリジナル泳法のすすめ

楽に、静かに、できれば速く、還暦すぎてのラクラク健康スイミング (円月泳法、鉤腕泳法、八の字泳法、招き猫泳法、らくらく2ビート背泳、やぎロール、イルカ泳ぎ等)

64. 泳ぐ生物と、我々の泳ぎ

私は或るジムのプールで泳いでいますが、いつも水が濁っていて、25mの半分くらいしか見通せず、これには辟易していました。
ところが、この10年来無かったことですが、年が明けて、くっきり隅々まで見えるようになったではないですか。濾過装置を本気で動かしてくれたのでしょう。
これがいつまで続くかわかりませんが、嬉しくなったのと暇なので、閑話休題として徒然なるままに何か書きたくなりました。

今日は、海に生きる動物たちに学ぶ、として、つぎの章立てで書いてみましょう。

1.海にいる先生たち
2.人類の試み
3.泳ぐ生物から学んだこと
4.還暦スイマーにできること

1.海にいる先生たち

泳ぐことに関しては、大海に凄い先生がたくさんいます。その中から、二人の先生に登場してもらいましょう。

・マグロ先生(流線型の工夫)

大海を回遊するマグロは、時速160kmで泳ぐこともできると言われています。
これを可能とするのは、一つはその体形です。典型的な流線形で、高速で泳いでも大きな抵抗を生じさせません。
しかし、それだけでなく、かなり細かいところまで気遣っているのには驚きます。
ひとつは、方向転換する時に使う胸びれ、腹びれ、背びれは抵抗の原因にもなるのですが、マグロの場合は、身体にある溝や凹みに収納できるようになっており、抵抗を抑えられるようになっているのです。
さらに、高速で泳ぐと身体の周囲に生じる渦流によって抵抗が発生するのですが、マグロの第2背びれ、臀びれの後ろには、小離鰭と言う後方の一辺が弧になった三角形の小さな突起が幾つもあり、これらが渦流を抑えて抵抗の発生を防いでいるというのです。さらに、さらに、尾びれの付け根には尾柄隆起縁と呼ばれる水平尾翼のようなふくらみがあり、高速で泳いだ際に身体を安定させられるようなしくみにもなっているということです。

・ペンギン先生(泡の効用)

皇帝ペンギンの泳ぐ速度は、通常、速くても秒速1.2~2.7メートル。
しかし、羽毛に蓄えた空気を微小な泡にして水中に放出すれば、泳ぐ速度は瞬間的に2~3倍に上がるといいます。通常は、体と水との間には摩擦による抵抗が生じているわけですが、これを放出するときには、その微小な泡の作用で、体を取り巻く水の密度と粘性が下がり、驚くようなスピードが出るというのです。

どうですか?

そうか、じゃあ、我々還暦スイマーもやってみるか、と考えたくもなりますよね。

私も、考えてみました。

でも、既に、泳ぐ生物については、これらを参考に、人類も色々考えて来ているのです。
少し次の章で紹介しましょう。

そんなの面倒臭いという方は、3章「泳ぐ生物から学んだこと」か4章「還暦スイマーにできること」に跳んでください。

2.人類の試み

ご存じかもしれませんが、最初の先生はサメでした。
サメ膚といわれますが、サメの皮膚は小さな突起で覆われており、それぞれに小さなV状の溝があって、全体として細かい溝が形成されています。これらが、皮膚の表面に発生する乱流を打ち消す働きをして、速く泳ぐことができるのです。

当然、人間もこれに目を付けました。
NASA、生体力学やサメの研究者たちによる協同研究開発を通じて「ファーストスキン」という水着が開発されました。そして、2000年シドニー五輪の時に、全参加選手の約60%がこれを着用し、12の世界新記録を生むという水着の革命を起こしたのです。

これは、サメの皮膚表面の形状を参考にした、全身を覆う斬新なスーツでした。具体的には、うろこ状の撥水プリントを生地表面に加工したもので、その溝に沿った小さな縦渦が生じることによって、表面に発生する乱流が打ち消されるように働くというものでした。

それからというもの、競技用の水着は開発競争のうちにありましたが、次の画期は2008年から2009年にかけての「ラバー時代」と呼ばれる期間に移ります。ここで開発された水着は、英国のスピード社が開発した「レーザー・レーサー」というもので、従来の布地の水着にあった縫い目がなく、体を強く締め付ける構造によって体の凹凸が少なくしたものです。そして、これを着た選手が数多くの世界記録を樹立しました。

だから、まだ目からウロコは落ちてはいないけれど、一番効いてくるのはサメ肌よりカツオ先生だったと気が付いたということです。つまり、「レーザー・レーサー」は、人間の体の凹凸をできるだけ抑えて流線型に近い形に補正するとともに、水流により生じる筋肉の振動や変形を抑えて抵抗の低減を図るために、できるだけ体を覆うものだったといえます。

しかし、これの脱着には30分ほどかかったそうで、人間への負荷も大きかったと言えます。

結局、苦労して作った水着も人間の健康の方が大事ということでしょうか、2007年、国際水泳連盟FINA)は「水着表面に(高速化のための)特殊な加工を施すことを禁じる」と決定し、2010年から、水着に関する新規定を以下のように定めました。

1.水着の大きさは、男子はへそを超えず、ひざまでとする。女子は肩からひざまでとする。
2.重ね着は禁止。着用できる水着は1枚のみ。
3.水着への張り付けは禁止。
4.素材は繊維か編物のみ。素材の厚さを最大0.8mmで、浮力の効果は0.5N(ニュートン)以下。通気性(空気の通過率)は毎秒80L以上。
5.ジッパー禁止

このような水着の規制は、まともな結論だと、私も思います。
そもそも、健康を損なうような運動の仕方というものが良いものであるわけがありません。本末転倒です。
その点、オリンピックは、限界に挑むことが目的であり、健康のためとは言い難いでしょう。

3.泳ぐ生物から学んだこと

でも、結局のところ、人間は陸の動物だからあきらめよう、というのは早計で、やはり、学ぶところは大きいのだと思います。

そこで、ここで初心に戻って、泳ぐ人間の形状と水の抵抗について、改めておさらいしてみることにしましょう。

人の身体には頭や肩、凹んだ?お腹や腿周りやバラついた下肢等々があります。それに対して、どのような水の抵抗が生じるかを整理してみましょう

(A)まず、水の流れを正面から受ける頭や肩などに受ける正圧抵抗
(B)次に、下半身を主として、下流側にできる渦による負圧抵抗
(C)更に、表面全体にかかる水の粘性によって生じる粘性抵抗または摩擦抵抗

分かりやすいですよね。用語は別として...

最初のAは、我々が直接、頭や肩で感じやすいところですし、下半身が下がって体が斜めになっている場合は特に胸や腹にも大きな抵抗を受けるわけです。何といっても、これが一番大きい。だから、前後に長く伸び、肩をなだらかにしたり、お尻を浮かせて、足も浮かせる、つまり、下半身を浮かせることが大事だという訳です。

次のBは、下流、つまり、お尻の後ろや、足の後ろなどでは、流れが身体から剥がれることによって渦が生じやすくなります。その渦が発生した部分は圧力が低くなって、身体を後ろ方向に引っ張る力になってしまうものです。だから、なるべく、下肢は真っすぐ伸ばしてピタっと付けている方が良いということになります。

一般的には、このAとBを合わせたものを抗力または形状抵抗と言いますが、泳ぐ生物は流線形であるためにこうした抵抗を受けにくいというわけです。逆に、人間が泳ぐときに受ける全抵抗の70~90%は、この形状抵抗といわれています。我々還暦スイマーの泳ぎ方では90%でしょうか。

3章で紹介した水着の問題は、Cの粘性抵抗を減らそうという努力でした。水泳技術の限度を尽くした上での、コンマ何秒という世界ですから、これが問題になるわけです。我々還暦スイマーには全く関係のない話です。ちなみに私の水着は、何年も使える丈夫なスクール用のボックス型水着です。

競技の世界では、最初のうちは、水着の材質が肌より粘性抵抗が大きいとして、恥ずかしいほど水着の面積を小さくすることで抵抗を削減しようとしていました。しかし、まあ、これには限度と言うものがあります。
それで、シドニー五輪からは、「ファーストスキン」という鮫肌に魅了された時代に突入し、今度は水着を大きくしました。
でも、結局、ウロコなんて姑息なことをするよりも、やはりイルカの形になった方がいいに決まっていると、ABの形状抵抗に焦点を絞った「レーザー・レーサー」という、体全体を覆う窮屈そうなウエアを開発することになったわけです。

でも、結局のところ、そんな非人間的なことはやめて?水着の制限をすることになったというのが結末です。

その結果、今では、水着メーカーも、従来の表面摩擦抵抗の低減に向けた生地開発競争から方向転換し、形状抵抗の低減を目指すのが主流となったそうです。とはいっても、許されている範囲でですから、水着で覆うことのできる骨盤周りと股関節に対して、どのようにサポートするかが争点になっているということでしょう。

まあ、これだけ細かいことをやって、その時は速くなったとはいえるようですが、そんなことよりは、現在の進歩は、根本的に、泳ぐときのフォームの研究が進んだことによることの方が大きいようです。

4.還暦スイマーにできること

さて、冒頭で、「私も、考えてみました。」と書いたので、何か書いておくことにしましょう。
閑話休題】として読んでください。

ひとつは、「マグロ先生に学んで」

・表面積を少なくするためにヒレをたたむ

ということです。

私の「らくらく2ビート背泳ぎ」(Backstrokes for elder people)が、その応用に適しているようなので、これを泳ぐとき、特に、1ストロークを長く、そして、ゆっくりと泳ぐときに心掛けてみてください。
では、マグロのように手足のヒレを畳んでみましょう。

ポイントは3つです。
(1)プルし終わった手のひらを、お尻の直下の腿裏にペタッと付ける。
(2)2ビートの蹴った(煽った)後の足首同士を重ねる。
(3)前方に伸ばした手と反対の肩の間を、できるだけ離す。
効果:
(1)プルし終わったときは心行くまで滑って行く時間です。したがって、腿の傍に手がひらひらしていたら抵抗を生む大きな要素になります。それゆえ、腿の裏にペタッと付けるのです。お尻の直下の腿裏に付ける理由は、お尻の直下の凹みを隠すと同時に、ローリングを開始するきっかけにするためです。
(2)足首同士を重ねるのは、両脚全体の表面積を減らすと同時に、水流をローリングに同調させ、円滑な水流を導くためです。重ねた先の足先がイルカのヒレみたいで、これも感じが良くありませんか。ローリングに合わせて、ちょっと水面上に片方の足先が出るように滑ってみてください。
(3)これは言わずと知れたことですが、お互いの肩を前後にできるだけずらすことによって、肩の出っ張りをなくして身体を流線型にすること、プルの距離が大きくとれるということで、良いことづくめです。

二つ目の試みは、ペンギン先生の「泡の効用」です。

・粘性抵抗を減らすために、細かい泡をたくさん出す

ということです。

このポイントは、できるだけ細かい泡を、身体の下側の表面にシュワ―――と長く吐くことです。

でも、そんなことできますかね?

我々は、秒速1mくらいしか出ないのに、姑息ですかね~
でも、25mで、0.1秒くらい変わるかも(笑い)
もしかして、オリンピック選手だったら有意な数字かな?

やはり、些細なことですね~、私らにとっては。ともあれ健康とは関係がない。
オミクロン株みたいに、取るに足らないことこもしれません。

こんな些細なことは考えないことにして、もっと大きな、大事なことに気を付けて生きて行きたいものですね。
でも、世間では、ただの風邪に過ぎないオミクロン株にまで戦々恐々として、ワクチンやブースターを打てとは、さすがに笑いも引き攣ります。
私は、血小板を破壊したり自然免疫を下げていく可能性が高い新型コロナのワクチン接種は、これまでしていませんし、今後するつもりもありません。

とは言っても、私ももうすぐ古稀。我々老人は、例え、ファイザー等の新型コロナワクチンを打っても、その中和抗体は、若い人に比べて、その半分も産生されないようです。
その分、ワクチンの副作用も半分以下だと良いのですけどね。でも心筋症などで亡くなった若い人と比べて、その半分と言っても、やはり亡くなってしまうことは変わらない。

みなさん、健康は、他人の考えに惑わされずに、自分で守りましょうね~