やぎさんのオリジナル泳法のすすめ

楽に、静かに、できれば速く、還暦すぎてのラクラク健康スイミング (円月泳法、鉤腕泳法、八の字泳法、招き猫泳法、らくらく2ビート背泳、やぎロール、イルカ泳ぎ等)

35. クロールを自分に最適化する その2(速やかな左右転換)

このブログの内容を、体系的にまとめて、次のウェブサイトで公開している。

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身体に合わせてクロールを最適化する その2

この記事は、前回記事(34. クロールを自分に最適化する その1(グライドとキャッチ)の続きである。

1. 楽に泳ぐことと、速く泳ぐことから

これまで、楽な泳ぎ方を追求してきた。

そこでは、個々人が、それぞれ多様な特性や個性を持っているのだから、楽な泳ぎ方も一様に存在するわけではないだろうとしてきた。

それゆえ、それぞれの個性に応じた泳ぎ方は、既存の方法に縛られる必要はなく、いくらでもあるのではないかと提起し、その方法を考え出して、このブログで例示してきた。特に、楽な泳ぎであれば、速くはないが、いくらでもあると。

しかし、一方で、32. 「速く泳ぐ方法」と「楽に泳ぐ方法」の相違 その2 」で、速く泳ぐことを目的とするならば、その方法は、一定の方向に収斂していくだろうということも述べた。

つまり、「速く泳ぐため」の姿勢は、身体の特徴に支障がなければ、その要件を満たす方法は、かなり一意に決まっていくだろうということである。

それというのも、遅く泳ぎたいという人は聞いたことがなく、普通、できることなら、楽に、速く泳ぎたいという人がほとんどだからである。かくいう私もその一人である。

しかし、問題なのは、速く泳ぐ方法が一定の方法や姿勢に収斂していくとしても、誰にとってもそれができるわけでもなければ、楽であるという保証も全くないからだ。

だから、ある程度速くしたいという場合は、今の自分の楽な泳ぎ方から、楽な範囲で、前に身体を伸ばしていき、お腹を締めていけばよい。

これまで、このブログで紹介してきた泳ぎ方から徐々に速くしたい場合でも、全く同じである。

まあ、最終的には、筋力がものを言うのだろうが、検討に値するのは、やはり、姿勢と、体幹の使い方だ。

特に、姿勢について、これが、楽にできるかどうかは、個々の身体の特徴に深く依存することになる。

2. もう少し速く泳ぐためのクロールの最適化

ゆっくり、楽に泳ぐ方法は結構書いていきた。しかし、もう少し速くしたいと考える私のような隠居じいさんが考えるならば、もう少し、工夫しなければならない。

既に書いたように、その形は一定の方向に近づくだろう。

しかし、筋力にも、柔軟性にも、限界があるのだから、やはり、自分の身体の特徴に合致した形を見つけなければならないと言える。さて、その形は、どんなものか?

ということで、前回の記事で、自分にとって最も抵抗の少ない姿勢とは、とうあるべきかを書いた。「イルカの姿勢」である。再掲すると次のとおり。

「顔は水底に向けたまま、なるべく身体を横に向けて、体全体は水平にまっすぐに保つ。片腕は、真っ直ぐに前方に伸ばし、できるだけ肩を前に出し大きく腋を空け、その肩を顎関節(顎の蝶番)あたりにあてる。反対に、もう一方の腕は水上に肘を高く挙げ、完全に脱力して前腕を頭のなるべく前に垂らすように肘を前方上に保つ。」

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前方に伸ばした腕は、肩を目一杯伸ばしているので、水の抵抗は少ない。ただし、真っ直ぐ前方に伸ばしていても、水平方向より深みを指しているのであれば、腕の上面に水の抵抗を受けるが、それは下肢を浮かす利点を持っている。

顎関節あたりを肩に付けるのは、腕を伸ばす方向を真っ直ぐに定位するためと、顔と腕の間に受ける水の抵抗をなるべく少なくするためである。

もう一方の水上の腕は、前方に体重をかけて下肢を浮かせ、後述するが、次の動作に備えて最も効果的な位置を保ち、リラックスする形をとっている。

体全体は水平に保たれて沈み、水面での造波抵抗を受けるのは肩のみとなっている。

以上である。

そして、自分の肩関節の柔軟性等の個人の特質により、特に前方に伸ばす腕の鉛直方向の角度やそれに伴うローリングの角度によって、イルカの姿勢がそれぞれに異なり、「自分のイルカの姿勢」があることを書いた。

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(1) より速く泳ぐには

さて、抵抗の少ない姿勢はこれで良いにしても、このままでは、当然、推進力がない。しかし、このイルカの姿勢を、できるだけ長く保つことが、効率的に進んでいくコツなのだということには、留意したほうが良い。

このことから、より効率的に泳ぐためには、イルカの姿勢の左右を、いかに速く切り替えるか大きな要素となることがわかる。

しかし、より速く泳ぐには、より、力強い推進力が必要となる。そのためには、ただ速く切り替えればよいというわけではなく、効率的な推進力をうることが同時に必要であり、当然ピッチ(ストロークのリズム)も速くしていかなければならない。

効率的なプルを実現する大きな要素が、キャッチである。これについては、前回の記事で書いた。

すなわち、前方に伸ばした腕の肘から先を、ふっと緩める。そうすることによって、前腕が水に押されて肘が曲がり、ゆるく弧を描いた前腕に周りの水が絡んでくる。これが、キャッチである。そして、身体は最大ローリング角から水底に向かうように戻り始める。同時に、キックする側である下の左足の膝を緩めてキックに備える。

ということである。

このキャッチの時点で、イルカの姿勢は崩れ始めている。

それゆえ、ここからは、速やかに左右の姿勢を転換しなければならない。

(2) 速やかな左右転換

今、あえて、「速やかに左右の姿勢を転換しなければならない」と書いた。

一般的には、「ローリングする」とか、「ストロークを開始する」とか書くのかもしれない。

しかし、私は、あえて、左右の姿勢転換と書くのが適切だと思っている。

それは、とりもなおさず、楽に進んでいく至福の時間はイルカの姿勢にあり、これの切り替えを効率的に行う動作にすぎないと思うからである。

それでは、この切り替え動作の順を追ってみることにしよう。左腕を前方に伸ばしたイルカの姿勢から始める。まずはキャッチに入る。

(a) 前方に伸ばした左腕の肘から先を、ふっと緩める。

こうすると、前腕が水に押されて肘が曲がり、ゆるく弧を描いた前腕に周りの水が絡んでくる。

肘の曲がる方向は、個人によっても若干異なるであろうし、自然に曲がる方向で良いと思う。

このキャッチで腕の周りにとらえた水を、なるべく壊さないようにまとめて後方に押し出すのだ。

身体は最大ローリング角から水底に向かうように戻り始める。同時に、キックする側である下の左足の膝を緩めてキックに備え る。

(b) リカバーの腕を頭近くから水中深くに突き込む

そこで、やおら、水上で前腕をだらっと下げ高く上げた右肘を、ゆっくり加速しながら伸ばし込んでいく。これは、緊張せずに行う。着水は、額の横である。それゆえ、手の甲が着水するときの角度は大きく、45度くらいになろう。

着水点から手の先を伸ばす方向は、鏡の前で確認したバンザイの方向であるが、その場所は、ローリング後の右肩が落ち着く位置からみて前方真っ直ぐの深みである。この深さは、各人のバンザイの姿勢、肩関節の柔軟性に依存することになる。

現実的には、水底の中央線を真下に見ながら、中央線の横(この場合は右)あたりを狙って、肩が顎関節にあたるところまで突き込むという感じであろうか。

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深さは、たとえば、肩関節が柔軟で、肩から真っ直ぐ腕を前方水平に伸ばせる人でも、最終的に落ち着く手首の位置は、水面から30cmくらいの深さになるはずだ。なぜなら、リカバリーに必要な角度をとり、沈んだ頭と肩の分によって、肩の位置は30cmくらい沈むはずだからである。

したがって、頭近くの水面から、45度で突きこんだ手を、真っ直ぐ最終目的の30〜40cmの前方深みに向かって、ズズドーンと伸ばしていくことになる。

この動作は、角度をもった右腕の上面が、前進速度と突き込む腕の速度が加算された速度で、前方に水を押していくことに他ならない。

そうすると、どうなるか?

急速に、左右転換が起こるのである。すなわち、右の前腕が水流の分力によって下方に押し下げられ、その結果、右肩が押し下げられるからである。

さて、その間に、キャッチを行った左腕はどうなるか?

右腕をこのように意識して突き伸ばせば、その相互作用として、これと入れ違いに、キャッチした左腕の肩(鎖骨)は自然に下がる。この動きがプルであるという意識は殆どなく、相互作用で左肩が下がっていくことによって、前腕が倒されたまま身体を巻くようにして自然に臍まで降りてくる

このときに意識すべきは、身体を丸太のように真っ直ぐに保つことである。そうするために、この転換の時は、意識して、身体の前面が真っ直ぐ、あるいは、少し凹んだくらいになるよう、腹を締めること。決して反らないことが大切だ。そうすると、同時にキックも自然に入る

これら動きは同時に行われ、グライドの時間に比べれば一瞬である。右肘を伸ばすときに受ける水流抵抗により、右肩が急激に押し下げられ、同時にキックも打たれ、左腕の肩が下りてその前腕が身体に巻き込まれることによって、クルンと回る。左右のイルカの姿勢が素早く完成され、同時に効率の良いプルも行われているということだ。

(c) 早目のリカバー

左腕が臍までプルしたら、腋を開いて弧を描いて水上に抜くが、その時に最後に手のひらで軽くスナップする。

これは、リカバーを早くする効果、リカバーして前に出す腕が前進する身体の慣性を弱めてしまうことを軽減する効果がある。これにより、体重を前方に早くかけ、ピッチを速くすることが可能となる。

(d) グライド及び突き込みの準備

左腕を抜き終わったら、速やかに前方まで肘を高くして腕を運び、前腕は、だらっとぶら下げた状態で頭の上で一旦止めること。

これは、腕全体の重さを早く前に出し、空中で止めることで、下肢が浮き、身体が水平に保たれる効果、止めることで、身体を前に押し出す効果が期待される。肘を高く取るのは、ローリングを確実に行うこと、腕の位置エネルギーを高めて次のローリングの勢いを付ける意味がある。また、前腕をだらっと下げるのは、リラックスする意味もあるが、入水の位置を手前にしたいためもある。前方に入水すると、上から抑えてローリングに勢いがつかなくなる虞があるからである。

このイルカの姿勢が、ちゃんとできているかどうか、確認すること。腰が反っておらず、腰も回転していることも確認しよう。

イルカの姿勢で、速度が鈍くなったら、(a)に戻る。

 

以上であるが、身体は、常に丸太のように真っ直ぐに保つことが、何よりも重要である。

そのためには、前方に沈めこんで体重を載せる腕の腋の角度は、無理のない程度にとどめること。これを無理に行うと、胸が反ったり身体が歪む。その上、三角筋僧帽筋疲労する。

身体が真っ直ぐに保たれれば、ローリングも滑らかに行われるはずであるが、意識して、肋骨を上に引き上げ、胃を肋骨の中にしまうようにすることも、非常に効果がある。

とかく、息継ぎで、顔を水上に持ち上げる人は多いが、そうすると、たちまち身体が歪んで抵抗が増してしまう。しかるに、こうして肋骨を上げ腹を細くすれば、下肢が浮き、浮力も増すので、まっすぐな身体を水平に保ったままで、真横で楽に息継ぎができるようになる。

(キックについて)

キックは自然に打たれるので、気にすることはないと書いた。

しかし、敢えて書くならば、大きくゆっくりと打つことを奨める。散歩キックだ。

大きく膝を緩めると、上体が反ることはなく、まっすぐに保たれる効果があり、これで、ゆっくりと大きく打つと、前傾して、つまり、前のめりのような感覚ですべるように進んでいくことができる。

25mを25秒くらいまでの速度で泳ぐのであれば、これが相性がよいと思う。

 

ところで、前記事とこの記事で説明してきた泳ぎは、オリジナルではない。

身体に合わせてクロールを最適化すると、こうなるであろうと考えるものだ。TIswimとも似ているであろうし、チャックさんがブログで書かれているスタイルにも近づいているだろうとも思う。

他の方々の理論を十分に理解できているわけではなく、私自身が、考察した結果がこのようになったというものだ。

それゆえ、この泳ぎに名前をつけるつもりはないが、私自身の「らくらくクロール」には違いのないところであり、いつも、10種類のメドレーに加えて泳いでいる。

 

さて、前記事で書いた通り、速く泳ぐためには、ピッチを速めなければならない。しかも、1ストロークの距離も減らさないようにしなければならない。

仮に、1ストロークに2秒、13ストロークで力を抜いて泳げば、25mあたり30秒くらいで泳ぐことになる。

ストロークにかける時間を短くすれば、速くなるが、ストローク数は14〜16と増えていくだろう。そのとき、力むと、さほどタイムには反映されないということもある。

疲れない、流れるような美しい泳ぎを、じっくりと、目指したいものである。

 

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