60. ハイエルボーについて思う
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ハイエルボーのハイは何のハイ?
通常、ハイエルボーが推奨されているのは、クロールにおいて、前方に出した腕の肘を水面近くに残して、手首を推定方向に垂れるようにひじを立てることを言うのであろう。
それができる人はそれで良いが、それは、結構難しい動きだ。
というのは、単に格好だけを真似ようとして、前腕だけを下に下げようとしても肩関節が痛くなるし、そもそもできない。
しかも、前腕を無理に下げれば、反作用で下肢が沈んでしまうではないか。
だから、特に、我々還暦スイマーには無理だ。
というのは乱暴かもしれない。ただ、いえるのは、この動きは手や腕だけを動かしてもできないということである。
では、どのように行えは良いのか?
ハイエルボーの姿勢のとりかた
まず、結論から言うと、これは、トップスピードで泳ごうとする腕の動きだということである。
この形は、つぎのようにしてできる。
(1)できるかぎり腕を万歳方向に伸ばす。
(2)腕全体を肩から内旋する。
(3)肘の力を抜く。
「肩の伸びと内旋」これが決めてなのである。これで、肩関節に無理なくできるであろう。
つまり、リカバーした腕を前方に限りなく突きこみ、思い切り上体をローリングしつつ、肩を前に回すようにして、肩や腕を内旋させる。そうして、肘の力を抜くと、水圧に押されて前腕が下がり、肘が直角に曲がるのである。同時にこれがキャッチとなる。そして、真っ直ぐ後ろに抗力泳ぎのプルを行う、という流れである。
スピードを出すには、とても良い泳ぎであると私も思う。できる人は、そうすれば良い。
しかし、冒頭でも書いたとおり、我々還暦スイマーの多くは、健康のためのスイミングだ。短距離でガンガン泳ぐ人は、そう多くはいない。
それゆえ、私は、ハイエルボーの老人的解釈をしてみたいと思う。
そもそも、ハイエルボーが、なぜ必要なのか?
この答えは全世界共通だろう。
それは、最も力を出すことが可能で、効率的な泳ぎは「匍匐プル」だと、私が主張している理由でもある。
すなわち、身体の最も前方で、前腕を、水流に対して90度にする、ということであり、そのとき、肩から肘までの方向が、万歳の方向であるということである。
この腕の形が、最も水を効率的に捉えることができ、最も力を入れ易く、最も抗力を大きくして長くプルできるからだ。
大賛成である。何の異論もない。
しかし、私が問題にしたいと思うのは、このときの前腕の向きは、下向き(水底方向)でなくても良いだろうということである。
我々還暦スイマーの泳速は、速くない。
速く泳ぐには、手足だけでなく、体幹の柔軟性が必要で、それを前提に思い切り伸びなければならない。そして、最速を求めるならば、薙ぎりストロークではなく、ストレートの抗力泳ぎが求められるだろう。しかし、これは結構疲れることだ。
そうだとすれば、我々還暦スイマーは、水底方向に前腕を垂直に落とすハイエルボーを、あきらめた方が良い。
その代わり、水底方向ではなく、より水平に近い方向に、肘が自然に楽に曲がる方向に曲げるのである。
これでも、同じような結果が相応に得られると思う。
これが、私の推奨している「匍匐プル」である。
この姿勢にいたるまでの動きには、付録が付いてくるという利点がある。
つまり、単に水底に向けて前腕を落としてキャッチを狙う「ハイエルボー」の動きに比べて、伸ばした手から、この姿勢までもってくるこの動きは、横に薙ぎる動きとして、我々相応の泳速に効果的な推進力を生むのである。これは、キャッチに代わる利点ともいえる。
このあとの「匍匐プル」は、力強くも楽なプルである。
つまり、これは、もう一方の腕が水上から前方下方に突きこむ拮抗作用として、ローリングと共に、プルの腕が巻き込まれるようにして、自然に体幹の筋肉(大胸筋と広背筋)の力で臍まで押し下げられるという、力強くかつ効果的なプルになるからである。
ハイ・ローは垂直軸ではなく、水平軸で
それゆえ、私は、ハイ、というのは、天地・垂直軸の方向ではなく、水平軸・推進軸における「前方」を「ハイ」と位置づけたいと思う。
できるだけ、肘を前のほうに残し、手首を肘と同じ位置まで持ってきて、これを維持することが肝要なのである。
匍匐プルでは、これまでの概念によればローエルボーといえるくらい、肘が水平にまで下がるが、それで良いのだ。
「肘と手首が同じ高さ=推進軸において同じ座標」をとるように努力すれば良いのだ。
極論すれば、泳ぐ方向=推進軸に対して、前腕が直角をなしてさえいれば、360度、どちらを向いていても良いのだ。
ちなみに、「59. 「そこそこスイミング」の4泳法への適用(背泳編)」でのそれは、仰向けであるが故に、匍匐プルにおける、肘から手先の方向は、下図のように天を指している。