やぎさんのオリジナル泳法のすすめ

楽に、静かに、できれば速く、還暦すぎてのラクラク健康スイミング (円月泳法、鉤腕泳法、八の字泳法、招き猫泳法、らくらく2ビート背泳、やぎロール、イルカ泳ぎ等)

16. キャッチとは? :  ローエルボーへの誘い その1  

「00. はじめに」の記事でも書いたが、適切なキャッチの方法は、泳速によって異なってくると私は考えている。

できるだけ、前方遠くに手を伸ばし、ハイエルボーで水を掴まえて、腿まで一気に抜ききるように見えるクロールは、かなり高速で泳いでいるものだ。より速く泳ぐためには、少しでも前で水をキャッチしたほうがよいに決まっている。それは原則として認める。

しかし、それに要するエネルギーや関節筋肉などにかかってくる無理といった代償を払ってまでそれをする価値が、誰にもあるのかというのが疑問だ。

1. 効率的なキャッチはどうあるべきなのか?費用対効果

この観点は、特に、われわれ還暦スイマーの立場でとらえ直す必要があると私は思う。

腕は肩から生えている!

あたりまえである。

しかし、前方に目一杯伸ばした腕で、そこで掴める水の塊は限られている。手の平だけでしかキャッチできないからである。腕は関節でしか曲がらない。

だから、手首だけでなく、肘も緩める。

高速で泳ぐためには、前方に目一杯の伸ばした腕をハイエルボーにしろという。肘を高く保ち、肘からさきの前腕を水底に向けてたらすのだ。

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でも、腕の関節は、そのようにはできていない。これは、肩に相当の無理がかかり、かなりきつい姿勢である。少なくとも私にとっては。

高速で泳ぐ場合にはいたしかたないのかもしれない。二の腕にかかる水流を軽減するために、腕を目一杯伸ばし外旋した前腕を緩めたときには、そうなるのだから。

でも...彼らの半分ほどの速さで泳ぐ私たちは、それを真似すべきなのだろうか?

ハイエルボーで高速で泳げる人に対して、私は何も言うことはない。肩を壊さない限り、何の問題もないだろう。

しかし、自然に無理なく肘を曲げる方向は、水底ではなく、頭に向かう方向ではないだろうか。だからこそだろう、かなり速く泳ぐ人でも、リカバーするために肘をかるく曲げた腕が、身体の中心線を越えて水に落ちているのを良く見かける。そして、水中に入った腕は、位置を修正され前方斜めにまっすぐ伸ばしなおされ、ハイエルボーにはならずに櫂のようにようにプルされているようだ。もちろん、それはそれで良い。結局、誰でも、それぞれの個性に合った、無理のない形がある。

ともあれ、私は疑問に思うのだ。前方に長く伸ばされた腕というのは、そんなに役に立っているのだろうかと。

もちろん、有用なことは認める。特に、身体を前後に長く伸ばして水流に対する抵抗を少なくする効果、さらに、プルの距離も長くなるという効果がある。だから、苦もなく、これができる人はそうすれば良い。羨ましい限りだ。

しかし、少なくとも、私にとって、この姿勢は、すぐに肩が疲れ、流線型をとろうとしても胸を張る結果となり、あまり好ましくない。

だから、寸秒を争う競技者にとっては選択の余地がないのだろうが、還暦スイマーには、もうすこしラクをする選択があっても良いのではないかと思うのである。

2. キャッチとは?

まず、最初にキャッチとは何か、考えてみよう。その上で、還暦スイマーにとって、効率的なエルボーの形を考えてみたい。

キャッチの効果は、風呂で湯船に浸かったときに、実験してみるとよく分かる。

腰湯で、少し前かがみになるくらいの姿勢になって欲しい。そうして、手の平を手前に向けて片腕を肘まで真っ直ぐ湯の中に垂らしてみよう。

そうして、次のことをやってみて欲しい。

(1)湯に沈めた前腕を、単に手前に引いてみる。

(2)一度、前腕を前方に動かしてから、反転して手前に引いてみる。

これら(1)と(2)の動きで、腕が受ける水の抵抗の大きさに差を感じないだろうか?

何度も、動かす速度も変えて行ってみると、(2)の方が重く、引っかかる感じがすると思う。

これは、簡単に言えば、(1)の場合は腕の周りの水塊がそのまま引いた腕の周りを、するっと、すり抜けてしまうのに対して、(2)の場合には、一旦前に押した腕に纏わりついた渦流などの水の動きが、反転して引かれた腕を一旦押しとどめようとする力が働くからである。

泳いでいる場合は、常に前に進んでいるので、

(a) キャッチしないでプルする場合は、(1)の時に引いたのことと同じような状況になると考えればよい。ただし、泳速より速く腕をプルしなければ意味はない。次に、

(b) プルする前に、肘を瞬時緩めると、水流による抵抗を受け(2)で水を前に押すのと似た状況になる。これをキャッチという。それゆえ、その状態からプルしたときには、プルに対する水の抵抗が(a)のそれと比べて大きくなり、その分だけ力も要るが、前進する力も大きくなるというわけである。

この(b)が、キャッチの原理である。(a)の場合より(b)の場合の方が、水の引っかかりが良いと感じる理由である。

もちろん、キャッチを行っている時間は、水流の抵抗を受けるので、泳速が減じる。それゆえ、長くやっていると、確実にキャッチはできるかもしれないが、確実に推進の邪魔もしていることになる。したがって、ふっと一息の間で行うのが望ましい。

ただ、思い出して欲しい。記事14で、水の抵抗について書いたが、「水の抵抗は泳速の2乗に比例する」ということを。

つまり、速さを競う場合は、このキャッチ時間は可能な限り効率的に短くしなければならないが、還暦スイマーにとっては、すこし余裕をもって確実にキャッチしても良いのではないだろうか。

 3. ローエルボーへの誘い

そこで、以上を前提にして、キャッチをするのに良い腕の形を考えてみたい。

それを考察する手始めに、プルで一番、水を掻く力が強い腕の形はどういったものかを、まず、考えてみたい。そのときに、効率的に水を引っ掛けたほうが良いのではないかと思うからである。

しかし、これも長い記事になるので、効率的なプルという観点で次回の記事に回すことにし、この記事はこれで閉じることにしよう。

 

次の記事を読む 17. 効率的なプル :  ローエルボーへの誘い その2

 

【泳ぎ理論考察】

 

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