09. 十人十色
このブログの内容を、体系的にまとめて、次のウェブサイトで公開している。
十人十色
人の体は、皆同じではない。それぞれ特徴があるし個性がある。どこか痛めていたり怪我をしていることもあるだろう。
また、人それぞれで、水泳に求める目的も異なることだろう。それゆえ、泳ぎ方は十人十色あって当然である。
私が、このブログで書いてきたことは、ラクにゆったりと老人の身体にあった泳ぎを楽しもうということである。そして、そのために参考になろだろうと思われる原則をできるだけわかりやすく説明してきたつもりである。
しかし、一般のジムのプールで泳いでいる私は、自分の泳ぎを撮影することもできないので、文字だけの説明になってしまい、理解の行き届かないところも多いだろうと懸念している。
それゆえ、私の記事では、特に、足を浮かせるメカニズムを理解し、また、腕の動きについては、掻くのではなく、肩甲骨を動かすことのみに注力すればよいということに重きをおいて説明してきたつもりである。ご自分の泳ぎの参考になれば幸いである。
健康法としての泳ぎの姿勢
ところで、足を浮かせるために、肋骨を上にあげる姿勢は、自然と腹筋もしめることにもなっているが、意識的にも下腹部を締めるのがよい。こうした姿勢はバレエの基本姿勢でもあるが、肋骨の中に胃をしまい、腰を細く保つことは、何をするにしても体幹がしっかりするので、他にも応用がきくはずだ。また、この姿勢は、おせっかいかもしれないが、日ごろのお通じを良くするのにも役立つ。老人がトイレで息むと脳卒中の危険があるが、この肋骨を上げる姿勢で腹全体を締めると、腸全体を絞る効果がある。ぜひお試しを。ただ、この時、息をつめたら元も子もないので、息を吸いつつ行うことが大切だ。健康を保つ秘訣のひとつに加えて欲しい。
肩甲骨は動きの要 肩こり解消にも
それから、肩甲骨について、もう少し述べてみたい。
腕の動きで再三説明したが、腕を小手先で動かしても、力は出ない。腕は、肩甲骨とともに固定するかのようにして、動かすのは肩甲骨の方を動かすのだ。どのようなスポーツでも、このことは大事だ。
テニスの例を引き合いにして考えると、このごろ有名なテニスの錦織圭さんのプレーで、エアケイと名づけられた一見不安定にも見えるジャンピングショットがある。これは、ボールの高さに自分の打ちたい体制を合わせるためにするプレーなのであろうが、実は、本人が知ってか知らずしてかは分からないが、私は、むしろ推奨したい効率的な打ち方だと思っている。なぜかというと、ジャンプして打つ場合、手だけでは打てなくなるからだ。腕だけで打つと弾き返されてしまうだろう。腕だけであれば、打つ力は腕の重さ以上にならないからだ。では、どのように彼は打っているかというと、肩甲骨を固めて全身で打っているのだ。つまり、身体が空中にあることで、足がささえる土台になっていないので、つまり、踏ん張れないので、必然的に体全体の重みをボールにのせた打ち方に、結果的になっているのである。
だから、私は、テニスのグランドストロークは、足で踏ん張るのではなく、むしろ、打撃の瞬間は、両足の力をふっと抜くほうが体重を乗せやすいと思っている。おそらく、野球の打撃もそうだ。
テニスや野球で思うのだが、腕の使い方にも理論があるはずだ。クロールで、腕は、視野のうちに入れておく必要があると、このブログで書いた。バットを構えるときやラケットを構えるときに、大きく腕を後ろに引くのには注意が必要だ。胸の平面の延長線上より後ろに持って行ってはならないと私は考えている。理由は、どうせ力の入らない無駄な動きになるからだが、それだけでなく、向かってくるボールに対応する時間が遅くなるし、姿勢をも崩し、場合によっては肩などを痛めるおそれもあるからだ。玄人はさてしらず、素人であれば、バットやラケットを構える位置は身体の正面の、胴の幅の範囲に納めたほうがよいだろう。そして、打つときは、肩甲骨で腕や肩を固定するつもりで体全体を回すのである。どのように回すかだが、曲げた両膝を打つ方向に鋭く倒すことに意識を集中するのである。そうすれば、体幹でがっちり支えられた身体全体の重みで球を弾き返すことができる。スウィングの速さだけで球は飛ばない。
水泳も、その点では同じだ。肩甲骨が特に鍵になる。これをしっかり上げれば、自然と体幹もしっかりし、腕にも力が入り、体重が前に移動して下肢は浮き、結果的に余裕が生まれ、ラクになる。
重要な鍵を絞れば、肩甲骨を常に上げることと、両手を前方で一度合わせるということだけでもよい。肩甲骨を下ろすのは自然の動きだからだ。上げることだけ意識すれば良い。
ところで、肩甲骨をよく動かせば、肩こり解消にとても役立つことはいうまでもない。
自分で肩甲骨を大きく動かし、その周りの筋肉を動かせば、血流が一番よい形で促される。マッサージなどの外部刺激は過度にやれば打撲と同じ結果を残し、その時は気持ちが良くても、血流が滞る原因となり、悪循環となりかねない。
健康の秘訣としての水泳
私は、毎日泳ぐようになってからというもの、風邪一つひかなくなった。自分ではどうしようもない場合には医者にも行くが、基本的に健康は自分で保つものだし、自分の身体は医者より自分のほうがわかっているはずだ。
水泳をする利点は、泳ぐ仲間には異論がないところではないだろうか。少なくとも、
- 程よい運動になり、かつ、無理な筋肉の使い方をしない。
- 皮膚の鍛錬になり、呼吸器系統を強くする。
- 肩こり防止に役立つ。
その他、プールには適度な雑菌もあて免疫強化に役立ち、泳法を研究すれば頭の体操にもなるし、というのは半分は冗談だが、ともあれ、健康に役立つことは間違いないと思っている。特に還暦過ぎた私には多くの面で役立っていると思う。
常々思うのだが、自分の身体には、自分で責任を持って、ゆったりとした人生の終末を迎えたいものである。早い遅いはあれど、いずれ、お迎えは来る。
その時、もっと、健康管理していればよかったといった反省はしたくないものだ。お医者さんは何の責任もとることはできないのだから。
【目的・概論】
- 00. 還暦すぎてのラクラク健康swimming
- 01. さかなのように、イルカのように、優雅に、静かに泳ぎたい
- 09. 十人十色
- 23. 閑話休題 オリジナル・メドレー
- 26. 身体的特徴と水泳
- 31.「速く泳ぐ方法」と「楽に泳ぐ方法」の相違 その1
- 32.「速く泳ぐ方法」と「楽に泳ぐ方法」の相違 その2
- 33.キャッチの感覚
- 52. イルカ泳ぎでは競泳に出られない(泳法と規則)
- 43~46. 水泳と身体の故障
- 61. 最後に ― 水泳と健康 その1
- 62. 最後に ― 水泳と健康 その2