やぎさんのオリジナル泳法のすすめ

楽に、静かに、できれば速く、還暦すぎてのラクラク健康スイミング (円月泳法、鉤腕泳法、八の字泳法、招き猫泳法、らくらく2ビート背泳、やぎロール、イルカ泳ぎ等)

32.1 「速く泳ぐ方法」と「楽に泳ぐ方法」の相違 その1

 このブログの内容を、体系的にまとめて、次のウェブサイトで公開している。

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1.はじめに

速く泳ぐ方法論は、ちまたに溢れている。
しかし、恐らく、その方法論は、誰にでも適用できるわけではないだろう。
膨大な数の競泳者の中から、努力と資質と天性によって選ばれた人たちだけが、最終的にオリンピックなどの競技に出場できるのだ。
例えば、かつて、2000年代初頭に活躍した、イアン・ソープというオーストラリアの選手がいた。彼の泳ぎは、誰でも真似ができるというものではない。つまり、身長196cmという体格と、柔軟性、筋力、持久力等々が揃っていなければ、彼の記録は達成できるものではない。
彼の泳ぎは、当時主流であったS字プルではなく、それらと比べるとゆっくりとしたストロークの直線的なプルを行うものであった。その泳ぎで、彼が金メダルを獲得した個人種目は、200mと400mであった。なぜか、100mや1500mでは勝てなかった。その理由は、彼の泳ぎのスタイルにあるようだ。
ゆっくりしたストロークは、彼の身長が高かったせいもあるだろう。しかし、ハイエルボーで直線プルを行う場合、ある程度までリカバリーしないと、身体の機構上、もう一方のプルを開始しにくいという理由が大きいと私は思う。それゆえ、彼は、短距離の100mで勝てなかったのではないだろうか。
また、直線プルは、最大抗力を生むプルではあるが、それだけエネルギーも消費する。それゆえ、長距離になると、体力の消耗が次第に効いてくる結果となったのだろう。
昨今のトップスイマーたちの多くは、I字プル又はストレートプルといわれるプルを行っているようだ。ソープ選手の泳ぎ方は、その嚆矢であったが、泳法は、時の流れにつれて変わってきているようだ。
しかし、物理法則そのものが変わるわけではない。法則をうまく活かす方法が、身体との関係で変わってきているにすぎない
この記事で、筆者が論じたいのは「エネルギー効率が良く、楽に泳ぐ方法」であるが、そのために、最初に、速く泳ぐ方法とはどんなものであるのかを確認しておき、その上で、を、これと対比する形で「楽に泳ぐ方法」を考察したい

ここでは、記述が煩瑣になるので、泳法規則に縛られない(つまり自由形)ことを前提としよう。


2.速く泳ぐ方法

これは、理論的には単純である。
次の3要件を満たす泳法を、工夫し、要件相互に調和をとって、実現することだ。

(1) 抵抗の最小となる基本姿勢をとること
基本法則で書いたとおり、水の抵抗を極力少なくするためには、「推進する方向に向かって、真っ直ぐ伸び、水面下に沈んでいる姿勢が一番良い。」
それゆえ、どのようなプルやキックを行うにせよ、真っ直ぐの身体を水面近くに、重心がぶれることなく保っていることが大切であり、これを崩すようなプルやキックはしないほうが良いということである。少なくとも、頭を先頭に上体を、丸太のように真っ直ぐ水平に保つことは最低要件であろう。身体が全面的に水上に出す事が可能であれば、水面下である必要はないが、造波抵抗に関しては水上に出さないほうが抵抗は少ない。

(2) 有する部品(手足)で持てる最大の推進力を生じさせること
最大の効果を有無方法は、上肢を使って、最大抗力を生む形状を作り、速く動かすことだ。
実現方法としては、前腕から手の平までを、進行方向に直角に保ち、後方に一直線に、速く、長く動かすことだ。(上腕は、余り考慮することはないだろう。なぜならば、上腕は、肩関節から肘までであり、どのようなプルを行っても、前腕と比較して抗力を生む効果はかなり小さいと考えられ、また、上腕の動きの違いによって、その効果が大きく変わるとも考えにくいからだ。)
下肢も推進効果を有無が、上肢ほど効果は生まないであろう。ただ、(1)を実現させるために下肢を使うのであれば、それは、もったいない使い方であるので、前進のために利用すべきである。

(3) 最大推進力を継続して生じさせること
上肢の動き(プル)の可動距離には限界がある。それゆえ、リカバリーを行わなければならない。リカバリーを行っている間は、もう一方の上肢で推進することになる。問題は、推力を常に最大に保っているかである。そして、競技であれば、決められた距離の間、それを保つ体力があるかということである。
そのためには、最大抗力を生む形状と動きを左右の腕で継続できるストロークの方法と回転数を、決められた距離の間、総合的に最大になるようにしなければならない。場合によっては、ピッチを上げたり、ローリングの角度を小さくする必要も出てくるだろう。

速く泳ぐ方法は、原理的には上記のとおりだが、その実現方法は、人の個性や資質によって随分異なる。
そもそも、「速い」ということは、競技でしか測れない。したがって、競技であれば、泳法や距離に規定がある。
例えば、冒頭に述べたように、ソープ選手は、自由形で、上記3要件を満たすハイエルボーのストレートプルの方法をとった。その結果、回転数は落ちるが、最大抗力を得て、中距離では敵なしという結果となった。当時、その他の選手はS字プルであり、その中から、スクリューのように、揚抗力の効率の良い泳ぎで、回転数を上げて100mを制した人がおり、また、1500mを制する体力を確保した人が他にいたということになる。
しかし、それは、2000年代初頭の、その時点での話である。
現在は、ストレートプル全盛の時代らしい。しかし、その泳ぎは、ソープ選手の泳ぎとは異なってきているようだ。

今後、どのような泳ぎになっていくにせよ、上記の3つの原則を、いかに、与えられた競技の枠で、特定の個人が、その資質の中で効率よく実現するかということに尽きる。そのためには、相応の犠牲を強いられることも辞さないということだ。そしてそれこそが、「楽に泳ぐ」ということと相反する要素となる。
実現方法については、多くの解説書があるので、ここで、あえて素人の筆者が説明することは僭越に過ぎる。上記3要件の観点で、それらの解説書を検討して欲しいと思う。

次は、本論の「楽に泳ぐ方法」についてであるが、長くなるので、次回に回そう。

 

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