やぎさんのオリジナル泳法のすすめ

楽に、静かに、できれば速く、還暦すぎてのラクラク健康スイミング (円月泳法、鉤腕泳法、八の字泳法、招き猫泳法、らくらく2ビート背泳、やぎロール、イルカ泳ぎ等)

22. らくらくクロール その8 八の字泳法

 このブログの内容を、体系的にまとめて、次のウェブサイトで公開している。

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単純で、ラクな泳ぎを紹介する。

八の字泳法

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と勝手に呼ぶことにするが、このような泳法は、これまでにあっただろうとは思うのだが、調べるつもりがないので、勝手に紹介させていただく。

これは、ゆっくり歩くようなリズムで、水中散歩をしている感覚がある。

とても簡単だ。

とても単純だ。また、肩が余り上まで上がらない方でも、充分できる。手が額くらいまで上がればできるのだから。

プルの腕の練習

プルの範囲

泳ぐ前に、プルの腕の動きを練習しよう。まず、陸上でもプールの中でも、壁に背を向けて、尻を壁にぴたりとつけていただきたい。

上体を前傾させ、前腕を額の少し斜め前方下に水平に「ハの字」の形に置く。これが基本姿勢だ。(図上)

まず、左腕から、ハの字の払いを延長する方向に、左斜め後方に、肘を伸ばさずに払う。手や肘が壁にぶつからないように、横に払い、肘の角度を常に直角近くに保ったまま、もとのハの字の位置に、静かに下ろす。(図下)

ハの字が揃ったら、今度は、右腕で逆方向に同じことを行う。前に置いた腕は肩とくっついて、上体のローリングと連動して動くが、その腕の形状は保つようにすること。

これを、慣れるまで、何回も繰り返し練習する。

壁を背にして練習する理由は、2つある。

 

ひとつは、肘を伸ばさない訓練をするためである。肘を伸ばすと上腕三頭筋疲労するだけでなく、後ろに回す時間が無駄になってしまうからである。泳 速を上げるにつれて、前腕が流れて肘が伸びてしまうことはありうるが、あくまで、力を込めるのは臍付近までで終わりにし、肘は伸ばさない。

ふたつめの理由は、身体の面より、腕が背中側に回らないようにするためである。腕を背中側に回すと、肩の筋肉や関節を傷めるおそれがある。それゆ え、腕を横に払う過程では軽く肩を後ろに引いてローリングを行う。そのとき、前に残したハの字の片割れの前腕の形状は変えないこと。ただし、上体の大きな 揺れに従って深く水底に向かって押しこむ動きは自然である。

さて、充分に感覚をつかんだら、実際に泳いでみよう。

まず、壁を蹴って、蹴伸びしてから、腕をハの字にする姿勢を取ってほしい。そして、以下の1、2で説明する腕のプルと足のキックを同時に左右交互に行う。下肢はピンとは伸ばさない。弛緩している方が良い。

腕の動き

壁際で練習したとおり、まず、右の腕で、ハの字の払いを延長する方向にプルを開始し、壁があるつもりで、右斜め後方に、肘を伸ばさずに払う。

腋を開けて、手先はだらんと垂らし、指先が水面を這うようにリカバリーし、元のハの字になるよう、水面と平行に静かに腕を下ろす。ハの字に揃った ら、今度は、左手で同じように、ハの字のはらいを延長するように、斜め後方に、肘を伸ばすことなく払う。こうして、左右交互に、ハの字に静かに置いては払 う。

ただ、このプルだけでは、最初はあまり進まないかもしれない。25m泳ぐのに、30回くらいストロークを要するかもしれない。この泳ぎは、次に紹介 するキックと非常に相性がよいのだ。このキックと合わせて、ゆっくり泳げば、半分くらいのストローク数で、楽に到達するだろう。さらに、後に詳述するが、 肋骨を引き上げて、重心を前に移動すれば、さらに楽に進む。慣れてくれば、キックなしでも充分に進むようになる。

キック

足は片足ずつ、腕のプルに合わせて、腕のストロークと同じ側の足を、腕を緩めた時に大きく膝を曲げて、腕が腹にかかる時にゆっくり蹴る。蹴るとは書 いたが、むしろ、押す、あるいは、伸ばして足先を揃えると考えたほうが良い。足によるプッシュなのだ。腕では、プルだけを行い、足では、プッシュを行うの だ。

この「キック」は、プルの腕と同じ側の足で同時に行う。一応、2ビートだ。

このプッシュの効果を知るために、とにかく、こんなに膝を曲げていいのと思うくらい、最初は特に深く蹴る。浅くすることは、いつでもできる。膝を曲 げきった時には、水流の抵抗を感じるだろう。この時に滞留する水がキャッチされ、足でのプッシュの威力も増すのだ。これが、通常のキックと大きく異なる。

図のように、蹴る足のくるぶしを、もう一方の足に沿って、その足膝の横にくるぶしが当たるくらいまで引きつけて、後ろにゆっくりズズドーンと押す(踵を もう一方の足より後ろに持って行ってはならない)。腹筋に力を入れて、身体を伸ばし、足先を揃えるという意識がよい。膝を曲げるときも、膝を腹に引きつけ るくらいの気持ちで行う。これにより、腰が浮き、上体が前に押し出される。また、ローリングも加速される。

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足首から下は、いつも脱力していること。また、蹴らない足も脱力しているが、蹴る足と一緒に動いても構わないし、そのほうが、推進力も増す。むし ろ、両足が仲良くしている方が、楽しく、気持ちが良いかもしれない。その場合は、傍目には、ドルフィンキックのように見えるだろうが、意識的に力が入るの は片側だけである。なお、蹴る足も膝が伸びきる前に脱力すること。

これだけ深く膝を曲げるためには、曲げる準備の時間も必要だ。それゆえ、蹴るとき以外は、足の緊張を常に解いておくほうがやりやすいし、疲労も少ない。

この「キック」を、今後の説明のために「散歩キック」と名づけておこう。

散歩キックとハの字プルを、水の抵抗を確かめるように、ゆっくりと、同時に行うと、前のめりというか、前方に回転するような感じを受けるはずだ。そして、これが気持ちの良い推進力になっていくことが体感できると思う。

散歩キックを初めて見る人は、こんなに膝を曲げるなんて見たこともないと、いかがわしく思うかもしれない。しかし、何よりも、散歩キックは、手足の動きが一致して自然であり、腰が浮き、推進力とローリングが加速されるすぐれものだ。

もちろん、高速泳法には向かない。そもそも、2ビートは楽に泳ぐためのものだ。大きく曲げる膝は、水の抵抗にはなるが、下肢を浮かす効果を持っている。

これは、体重を前へと移動することになり、抵抗により揚力をも生じさせるからだ。腰を浮かせて身体を水平にすることは、非常に大事なことだ。大きな 面積の胴体を斜めにするより、太ももを斜めにするほうが、余程ましだ。膝を大きく曲げても、その欠点を補完する効果もあるのだ。このことは、蹴伸びして片 方の膝を大きく曲げてみれば、その抵抗が然程でないことがわかると思う。

息継ぎ

同時に行うストロークとキックは、身体をゆっくり持ち上げる効果があるので、この時、そちら側に少し顔を回せば、楽に息ができるはずだ。 ただ、次の段階のことを考慮して、上体の浮き沈みも利用してみよう。同時に行うストロークとキックのバランスを調整することにより、上体をゆっくり持ち上げたり、上体を沈み込ませたりするのである。

右腕の前腕を前方に置く際、左足のキックを若干大きくして、置いた右腕に頭の重さを加えて体重をかけて前方に飛び込むようにしてみよう。そうする と、前方の斜め下方に上体が沈み込みつつ、反対に下肢が浮き上がる。あたかも、右受け身に飛び込んでいく感じで、ローリングしながら時計回りにねじ込み、 滑っていく感じがある。

左腕は、ローリングに引っ張られて、すばやくプルが行われ、腋を大きく開けて水上に抜き去られてリカバリーされる。そして、前のめりに加速感をもっ て滑っていく間に上体が沈んでいく。次に、その左腕をハの字に押しこんでいくが、今度は、右腕でプルし、右足でキックする番である。この動作を、前方斜め 上めがけて浮上する心持ちで行うと、スーッと上体が浮かんでくるので、右側に少し顔を回すだけで楽に息継ぎができるはずだ。

八の字泳法の評価と注意点

八の字泳法は、動きが単純で、ラクであるにもかかわらず、その速度は、速くはないが、遅いものでもない。壁を蹴らないで、25mを16ストローク、35秒前後くらいのペースであろう。小一時間で2kmは泳げる。力を入れて泳げば、25mを14ストローク、25秒前後だ。

散歩のストロークは、ハの字に斜めに払う。また、散歩では、意識的な大きなロールはしないが、腕のリカバリーは胸の平面を越えて後ろに回すと肩を痛 める虞があるので、壁を背にした練習での腕の動きでリカバリーができるぐらいの上体のローリングは必要だ。また、浮き沈みを効果的に使う場合には、積極的 にローリングしたほうが上手に沈みこめるだろう。

それに、もうひとつ、ローリングの重要な効用がある。それは、キャッチだ。ハの字に置いて、残した腕の前腕は、もう一方の腕がリカバーしてくるとき に、自然とローリングに引きずられて水流を斜めに遮る形になり、これが、水をつかむキャッチとなっているのである。したがって、これに続くプルが効果的に 水を引っ張れる結果となっている。

プルとキックの効果

散歩でのキックの方法は、すでに説明したとおりであるが、このキックは、腰や下肢を浮かす効果と、前進力を生む効果がある。

小さく蹴れば、水流に対して、膝を緩めた時の抵抗が小さくて済むが、上記効果も小さくなる。大きく蹴れば、その逆である。

その効果の違いを、コースの行き帰りで、実際に、大きく蹴ったり、小さく蹴ってみて確かめよう。当然であるが、そのときのプルは、キックのスピードや強さと同期させて行おう。

また、ゆっくりと弱く蹴ったり、強く蹴ったりして、その効果の違いも確かめよう。

大きく蹴ったり、強く蹴れば、下肢の浮きが良くなり、身体が水平に近くなり、推進力も高まる。

小さく蹴ったり、弱くゆっくり蹴れば、下半身が沈みがちで、推進力も弱まるはずである。

ピッチも、意識的に、速くしたり、ゆっくりしたりすることによって、その効果や、疲労の程度も確認しておこう。

どのようなキックが、自分にとって、らくな範囲で泳げるか、その時のキックの大きさやスピード、強さを確認しておこう。人にもよるが、おそらく、最も楽で、そこそこの効果があるのは、大きく、ゆっくり蹴った場合であろう。

重心移動、浮沈の効果とらくな息継ぎ

重心を前に移動する練習

基本原則で述べたが、バタ足をしなければ、通常、足が沈んでいくものだ。普通、自然に浮かんだら、前に手を出していても足は沈んでいく。

キックを弱くすれば、やはり、下肢が沈みがちになる。

 

前進するための抵抗を少なくするためには、より水平に身体を保つ必要がある。当然、より速く泳ぎたいときも同じだ。

沈みがちな下肢を浮かすためには、なるべく身体の重心を頭の方に引き上げるようにすればよい。身体の浮力の中心より重心が前に来れば、シーソーのよ うに頭が沈んで足が浮くというわけである。そのように努力すれば、足が浮くようになり、キックなどしなくてもクロールや背泳が楽にできるようになる。

その方法として、一番効果的なものが2つあることを、既に、基本原則2で述べた。

(1) なるべく、前方に腕を残す時間を多くとる。

(2) 肋骨を上に引き上げ、胃を肋骨の中にしまい、お腹を細くする。

散歩では、このうち、(1)については、両前腕をハの字に置くことによって、腕を前方に残す時間を多くしている。その効果を確認するために、試し に、リカバリーした腕を前方にハの字に置く前に、もう一方の腕のストロークを始めてみると良い。前方に重心を置く効果が薄れ、下肢が下がり気味になること が確認できるであろう。

次に、(2)について、練習してみよう。これは、少し修練が必要であるが、非常に有用な技術だ。何より、腹が締まって、スタイルが良くなる。がんばってみよう。

まずは、陸上での練習として、空気を肺一杯吸って、その肋骨の形を維持して、空気を思い切り吐く。腹だけがしぼむはずだ。

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できるだけ、胃を肋骨の中にしまうように腹筋を使う。これは、腹筋運動で使う腹直筋ではなく、腹の横の筋肉(腹斜筋)を若干緊張させる。

これができるようになると、実際に、この姿勢で、散歩を泳いでみて欲しい。そして、そうしないときと、そのようにするときの違いを確かめて欲しい。

肋骨を上げる(胸郭を広げる)ことができるようになると、体全体が浮きやすくなると同時に、極めて容易に下肢が浮くようになり、浮くためのキックは 不要なほどになる。こうなると、動作の緩急のピッチはどのようにでもなり、ゆっくりした動作で、そこそこ速く泳ぐことができるようになる。

息継ぎは、肋骨を上げたまま、腹を膨らませて、空気を吸う。

すなわち、いつも胸郭が広がっているので、息継ぎをする時は腹式呼吸で行うのだ。水の中で胸を膨らませるよりは楽なはずである。とはいえ、胸郭が広がって いるので交換できる空気の量は、肺の半分ほどになるが、これには、すぐに慣れる。また、普通、息継ぎの直前に息を吐くほうが、浮力を十分に活用できて良い のであるが、苦しければ、息継ぎしない側でのプルのときに少し吐いても構わない。ここで、重要なことは、そうした動作の有無による結果の違いを認識し、適 宜に動作を選択し、コントロールできるようにすることだ。

浮沈の効果とらくな息継ぎ

次に、上体の浮き沈みを利用する練習をしてみよう。同時に行うストロークとキックの強さのバランスを調整することにより、上体をゆっくり持ち上げたり、上 体を沈み込ませたりする練習である。これは、これは、すべての泳法に共通で、非常に重要な動きなので、習得できるまで、しっかり練習しよう。

ここでは、右側で息継ぎをする場合を想定して説明する。

右腕の前腕を額の前方水面にハの字に置く際、左腕のプルを行いつつ、同時に行う左足のキックを若干大きくして、水面に置いた右前腕に上体の体重をか けて、頭を下げて押し込んでみよう。そうすると、下肢が浮き、上体が前方斜め下方に沈み込みつつ加速が得られるようになる。次に、既にリカバリーを終えて 一緒に水没してきている左腕をハの字に戻すが、右腕のプルと右足のキックを、頭を上げ気味に前方斜め上めがけて浮上する心持ちで行うと、スーッと上体が浮 かんでくるので、右側に少し顔を回せば楽に息継ぎができるはずだ。

この浮き沈みを、最初は大きく行い、深さの感覚を確認してみよう。

この浮き沈みの運動は、息継ぎが楽になるだけでなく、推進力を増加させる働きもあることを確認しよう。

前進しながら、上体を沈ませたり、浮かせる場合は、ことさら肋骨を引き上げなくても、結構、楽に姿勢を制御できるようになるが、肋骨を引き上げると、浮力がまして、より確実に制御しやすくなる。

下肢は、両足とも、なるべく脱力して、蹴る足だけに必要な時間、必要な力を加えよう。

  

 

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