19. らくらくクロール その6 招き猫泳法
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久しぶりだが、らくらくクロールの新しい泳法を紹介しよう。
この泳法でも、抵抗をなくすために身体を真っ直ぐに保つということが基本であるが、それは、上体の姿勢にとどめ、手足の形態は、通常のクロールとは大きく変えた。
通常のクロールでは、腕や身体を前後に長く伸ばすのが通例であるが、この泳法では、腕も真っ直ぐ伸ばさず、下肢も、若干緩んだ感じが基本である。
泳ぎの動作は、四足でゆったり歩く感じ。だんだん速くしていくと、ねこが獲物を狙って次々に跳躍していくような感じになる。もっとも、傍から見れば、大きな犬かきといった風情かもしれない。
しかし、そんな格好でも、他のらくらくクロールに比べて、泳速に遜色はない。むしろ、もっと速くなる可能性を秘めているかもしれないと、私は考えている。
名前は確定していないのだが、
招き猫泳法
と呼ぶことにした。手の形がそっくりだからである。
それでは具体的に説明しよう。
1. 基本的姿勢
(1)頭から腰までの上体を、真っ直ぐ水面に浮かす。
(2)腕は、スフィンクスのように、肩間接と肘を直角にして、手のひらは水底に向ける。(ただし、実際に泳ぐときに、両腕を同時に平行に揃える瞬間はない。)
(3)足はリラックスさせて伸ばす。
重要なことは、上体の位置である。決して反らせてはならない。むしろ、丸めるような意識で良い。
2. 腕の動き
通常のクロールは、手の先を可能な限り前に出すことを求めている。身体も、前後に長く長く伸ばせと。
確かに、形状抵抗を小さくするために、それができればよいが、私のように、肩関節の可動範囲が狭く、腕を前方水平に伸ばせない者にとっては疲れるし、つい胸を張って抵抗を増やしてしまう。
そこで、この泳法では、リカバーした前腕を、水面に鉤型に平行にして着水させ、そのまま水底の中央線めがけて手の平を下に向け前腕全体を水平に保って、体重をかけてこれを押し込むのだ。一連の動きは、アニメ動画で確認していただきたい。
(1) リカバーしてきた左腕を、写真5までで体重をかけて押し込む。
前腕を「水平に押し込む」と書いたが、本当は、すこし前のめりに押し込んだほうが良い。前進するための揚力が得られるからだ。ただし、押し込み終わったら、手の力を抜いて水平に戻す。鉤腕泳法と同じように水流に対する抵抗を上腕だけに受けるためだ。しかし、そうすると、手のひらだけは倒れて、招き猫のような手の形になる。前腕を水平にするために手首があがり手のひらだけ倒されるからだ。これが、キャッチとなる。このときには、もう一方の腕(右腕)が、リカバリーを終わって水面に鉤型を保って着水される。
(2) リカバリーして着水した右腕は、上記の動作で押し込まれるが、その間、キャッチに入った左腕は、プルを行う。これは、体重を乗せて押し込んだ右腕との相互作用として、実際には余り考えることなく、上体のローリングに伴って自然にプルされるのであるが、その形状と軌跡には選択の余地がある。
ここでは、招き猫の手の形そのままに、肘を伸ばすことなく、真っ直ぐにプルする。プルするといっても、肘を伸ばさないので三頭筋は使わない。腹筋と広背筋を使って肩甲骨を押し下げる動きで、肘を横腹まで引きつけ、腋を広げてそのまま抜く。
(3) 抜いた手は、だらりと下げて、水面をなぞりながら、肘が肩の線まできたら着水し、前方下方にねこが獲物を押さえ込むような感じで水中に押し込みながら身体は前に跳び込んでいく。前のめりだ。
このプルは、上下方向には少し弧描くが、基本的には前後の直線プルである。これは、直進性を保ち、前進と胴体を押し上げることに力を発揮している。
身体の直進性のバランスを保つためには、前方に伸ばす腕は、肩幅か、それ以上開いた位置に着水するのが良いだろう。
この時の格好であるが、次第にリズムを上げていくと、さながら、自分が豹になって、獲物に向かって匍匐し、ダッと跳びだすかのような気にさえなる。それゆえ、手指の形が、ついつい鈎爪になっているから笑ってしまう。
このプルは、前腕が水流に対して直角にならない。したがって、直接的な推力に寄与しないようであるが、水流を招き猫の手の平に集める結果となり、抗力を増していると考えられる。
3. 下肢の動き:キック
下肢は、上体の丸太のような真っ直ぐな形を邪魔してはならない。
そこで、ピンと伸ばすのではなく、力を緩めて、膝が曲がるくらいで良い(基本姿勢)。
蹴り方は、前記事「18. 2ビートキックの効用」で紹介した「散歩キック」で、膝を大きめに緩めて、後方に向けて蹴る方法が良い。
ゆったりと泳ぐ場合は、さらに、ゆっくり、大きめに蹴る。
ズズドーンと蹴るのだ。そうすると、ドーンと身体も前に押し出され、腰も浮く。
大きく蹴るためには、足をピンと伸ばさず、膝を緩めておかなければ間に合わない。また、両方の膝が曲がっていると、両足で蹴ることもでき(ドルフィン)るが、比重は片足にかけるほうがいいだろう。両足を使うと、体全体が、バネのように伸び縮みする感覚があり、リズムも良い。
蹴る足は、一応、プル側の足を想定している。腰は大きなローリングはしないので、反対側でもよいのだが、それは、好みの問題だろう。
4. 効果の評価
冒頭で述べたように、この招き猫泳法は、これまでのクロールを美しいと思う人には、格好が悪いと感じるかもしれない。大きな犬掻きといった格好だからだ。
しかし、格好に似合わず?結構、速い。
私は、25~30秒で25mを14ストロークほどで泳ぐ。私のクロールとそう大差はないのだ。もっとも、クロールでの最速は20秒ちょっとなので、クロールが遅いといわれたらそれまでのことだ。しかし、クロールの速い人でも、この泳法で泳ぐと、同等か、もっと速く泳げる可能性があるのではないかと思う。
その理由であるが、この泳法では、前下方に押さえる前腕、抗力効果のおおきい直線プル、斜め下方へのキックに身体を水面に押し上げる効果があるのが特徴であり、速く泳ぐほど身体を水面から上に押し出して、形状抵抗や摩擦抵抗を少なくすることが期待できるからである。
ただし、速く泳ぐにしたがって、前方に押さえ込む前腕は、だんだん前に出していくことになるだろう。どんな、泳法でも、泳ぐ形は泳ぐ速度によって少しずつ変える必要があるからだ。招き猫泳法が散歩歩きから、跳躍泳法への変身だ。
とにかく、これまでの、伸びて伸びてといった泳ぎとは、全く感覚が異なり、バネが伸びたり縮んだりするような弾力性のある動きなので、やみつきになる。ぜひお試しあれ。
【クロール】
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